理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI) Brain Science Institute



TOPICS
世界脳週間開かれる
 去る3月10日から3月16日を中心に、日本各地の12か所で脳科学の研究の状況やその意義を紹介することを目的として、第4回世界脳週間が開催されました。
 BSIでは3月15日、脳科学総合研究センター東研究棟において、高等学校の先生方や生徒を主な対象に、1日理科教室を開催しました。プログラムは伊藤所長の挨拶に始まり、基本的な脳の働きがアニメーションで紹介され、「神経細胞が成長する仕組み」と、「脳の病気の遺伝子を探る-てんかん・ダウン症-」の2つの講演が実施されました。続いてグループに分かれてfMRI、EEG、アイトラッカー(眼球運動の測定装置)を見学しました。講演、研究施設の見学とも活発な質疑応答が交わされ、BSIの一日理科教室は成功裏に終了しました。
第3回Picower-RIKEN脳科学シンポジウム
 2003年3月26日〜28日の3日間にわたり、マサチューセッツ工科大学(MIT)のピカワー記憶学習センター及びRIKEN-MIT脳科学研究センターの共催による第3回Picower-RIKEN Neuroscience Symposiumが開催されました。Richard Axel博士、Robert Desimone博士の基調講演をはじめ、内外から招かれた20名の講演者によって最先端の研究成果が発表されました。BSIからは田中啓治グループディレクター、高橋良輔チームリーダー、岡本仁チームリーダーが講演を行い、伊藤正男所長が閉会の辞を述べました。また、講演会場の外ではポスターセッションが催され、活気あふれる交流が図られました。
脳を育む:学習についての学習
 4月1日、正式に研究を開始した理研脳科学総合研究センターの最新テーマ「脳を育む」領域の研究グループ発足を控え、3月27日に同タイトルのシンポジウムが開催されました。このシンポジウムでは、進歩する脳の研究において重要なテーマが討議され、同分野の外部研究者らとのディスカッションが展開されました。
 臨界期機構研究グループのグループディレクターTakao K. Hensch氏は、シンポジウム開催の挨拶でBSIの「脳を育む」の研究メンバーを紹介しました。BSIは、次の二つのグループを、脳の発達過程をもっと知りたいという社会的要求の高まりに応えて創設しました。
●「発生発達研究グループ」御子柴克彦グループ ディレクター
●「臨界期機構研究ループ」Takao K. Hensch グループディレクター
これらの二つのグループはいずれも既存の研究グループから構成され、脳細胞の分子メカニズムに焦点を合わせた研究を行います。今後、さらに次の二つのグループ(各々二つの研究チームから構成)を創設し、人間のより高次の脳機能に重点を置いた研究を行う予定です。
● 高次脳機能発達研究グループ
● 学習機能研究グループ
 シンポジウムの演者である、UCバークレーのAlison Gopnik氏は、子供は科学的手段を用いて身の周りの世界を自分なりに理解しているという研究データを提示しました。 即ち、子供はその理解をもとに行動し、さらにその結果に基づいてその考えを変えていくということです。シカゴ大学のDaniel Margoliash氏は、人間の音声知覚と鳥の歌学習の双方に共通する睡眠の影響を調べ、幼鳥期のキンカチョウを使って歌学習における睡眠の重要性を実証しました。また、同氏の研究は、睡眠によって学習したことが統合されることをも示唆しました。最後に、英国ロンドン大学のAnnette Karmiloff-Smith氏は、認知発達の研究は、これからの脳障害の研究に取り入れられるに違いないと力説しました。
 各プレゼンテーション後に行われた活発な意見交換は、このテーマに対する関心の高さを示しています。OECDのBruno della Chiesa氏は、閉会の挨拶で「我々の目の前にある研究は、教育政策および制度の策定において重要なものとなるであろう。」と述べ、会を終えました。BSIは、このシンポジウムを足掛りとして、人間の脳の発達という新分野へ道を成功裡に一歩進めました。
第4回RIKEN-MIT Neuroscience Research Center 運営会議
 2003年3月29日、マサチューセッツ工科大学(MIT)において、第4回RIKEN-MIT Neuroscience Research Center運営会議が開かれました。理研脳科学総合研究センターとMITとの間で一層の相互交流と連携研究を図るため、さらに5年間のRIKEN-MIT協定が結ばれました。

理研 一般公開
 恒例の科学技術週間行事が“ふしぎがいっぱい ゆめいっぱい みんなかがくで あそぼうよ”をテーマに全国各地で開催され、その一環として、理化学研究所和光本所では4月19日(土)に一般公開を行いました。当日は好天に恵まれ、5700名の来訪者でにぎわいました。BSIの中央研究棟には20を超えるコーナーを設置し、家族連れや小・中学生が研究者の工夫を凝らした展示物に触れて熱心に説明を聞く光景があちらこちらで見受けられました。
 また、鈴木梅太郎記念ホールでは、創発知能ダイナミクス研究チームの山口陽子チームリーダーによる「脳の中はオーケストラ?」と題する講演も行われ、脳が情報をまとめる仕組みを解明する研究が紹介されました。当日は研究者と一般市民とが交流する有意義な一日となりました。
 
松本 元先生を偲んで The only one
 「‘the best one’ではなく‘the only one’を目指そう。」故松本 元先生が我々に繰り返し語った熱いメッセージの1つであり、元先生らしい言葉だと思う。‘the best one’は既存の価値観のもとでの優劣で十分成り立つ存在であるが、‘the only one’となるには新しい価値観を創出しなければならない。元先生は我々にそして御自身に「より創造的であれ」と言っていたのであろう。そして、私が見る限り先生は‘the only one’に限りなく近い存在であった。
 このことは元先生の研究の在り方に色濃く現れている。先生は脳を創ることを考えたときに、単に脳のように動く物を創ろうとせず、まさに生きた脳を創ろうとされていた。そのために、まず、生きるということを定式化し、それと脳との関係を洞察し、さらにはこころの問題に近接することを考えられていたように思える。我々を取り巻く非線型性の強い実世界を処理するには、生きるためという拘束条件でもないととても出来そうにないということは容易に想像できるのであるが、生きるということを正面して考えることは辛いが故に等閑にされやすい議論である。元先生は御自身が本質と考えられた事柄に関しては、決して怯むことなく考え続けられた、まさに‘the only one’であった。今は、元先生が示された勇気・純真・優しさに一歩でも近づきたいと思う。
脳型デバイス・ブレインウエイ研究グループ  脳創成表現研究チーム 木村 哲也 記
松本 元脳型デバイス・ブレインウエイ研究グループディレクターは、去る、3月9日にお亡くなりになられました。    BSI職員一同、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

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