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  電子図書館の時代へ

BSI情報センター
中林和典

BSI情報センターのスタッフ(前列真ん中が筆者)

 人類は、言葉を使い対面する人に意志を伝えられるように進化してきました。さらに、文字を発明し、その場に相手がいなくても意志を伝える手段を獲得しました。古代文明が栄えた地域に残る遺跡の壁面には、古代文字が刻まれており(文字を持たない文明もありますが)数百年、数千年後の私たちでもその場に行けば、今だに目にすることが出来ます。
  さらに、紙を発明し、文字を書くことにより、遠く離れた人にも簡単に意志を伝えることが可能になりました。そして印刷技術を発明し、飛躍的に大量に複製・配布できるようになり、今日私たちの身の周りは印刷物で氾濫しています。
 このように情報の発生元(加工元)で、大量に作成された印刷物は、輸送機関を通して必要とする者の手元に届けられるようになりましたが、印刷物を手にしないと見ることができない、印刷物を手にするまで知ることができない、というタイムラグが依然発生します。しかし、インターネット技術、ネットワーク技術、コンピュータ技術の発達により、対象物(意志、情報など)は印刷物を媒体とする配布手法から、発生元にのみ対象物を置き、必要とする者が必要なときにネットワークを通して、どこからでも入手できる環境ができつつあります。つまり魅力的なのは、タイムラグがなく情報が発生する(加工される)と同時に、どこからでも見ることができることです。出版社業界、新聞社業界が今後これらの技術の発達により大きく業務形態が変わると考えられますが、現在はまだ過度期であり、思考錯誤的、模索的に試行している段階です。将来は電子ジャーナル、電子本などが当たり前となる世の中が来るでしょう。
 ところで、BSI 情報センターでは、図書室も運営しており、電子ジャーナルを中心にした電子図書館を目指しています。BSI は教育機関ではなく、成果を求められる研究機関であり、体系的にまとめられた教育書ではなく、世界中の最新の研究成果情報が研究者から求められています。新たに設立した図書室は蔵書数が少なく、またそのほとんどが外国雑誌であり、その環境ゆえに、過去の遺産(蔵書)を意識することなく、電子図書館を目指すことができます。ただし、私たちの求める外部環境(電子ジャーナル環境)は、残念ながら未整備状態であり今後の発展に期待しています。つまり、全ての雑誌が統一された規格で電子ジャーナル化され、アクセス方式(検索・閲覧等)も統一されることを望んでいます。
 話は変わりますが、電子図書館には欠かせないコンピュータは発明されてから約55年しか経っていませんが脅威的に発展してきました。真空管、トランジスタ、IC、LSIと目覚しい技術の進歩があり、高性能、低価格、小型化が実現されています。しかし、発明当時から今日に至るまで変わらないのは、コンピュータが四則演算、論理演算をする道具にすぎないことです。大変、便利な道具ですが、人がその処理方法を与えないと何もできない機械です。世の中には、この便利な道具を使いづらいやっかいものと考えている方も多くいます。ただし、確かに使いづらいこの道具も、徐々にではありますが、少しづつ使いやすくなっています(ソフトウエア開発者の努力と技術の進歩です)。私たちはこの便利な道具に振りまわされるのではなく、有効に使いこなしたいと思います。逆に、使いこなさなければ意味のない道具ですから。
 私たちは目指す電子図書館のために、インターネット技術、ネットワーク技術、コンピュータ技術(現行のコンピュータ技術だけでなく脳型コンピュータの技術も)、さらに電子ジャーナル技術が飛躍的に進歩することを望んでいます。決して、現在の技術水準に満足してはいません。将来は人間にやさしいシステムに囲まれ、高度な技術を手軽に使いこなせる環境ができあがることを夢見ています。

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