第3回 Brainサイエンスカフェ×4本@理研和光地区一般公開

posted in 2016.06.08

第3回 Brainサイエンスカフェは4本開催! ゆったり楽しく大盛り上がり

開催日時:2016年4月23日(土)
場所:理研和光地区脳科学中央研究棟 伊藤正男ラウンジ

2016年理研和光地区一般公開BSI主催イベントの一環として、3回目となるBrain サイエンスカフェをBSI施設内のラウンジで開催しました。さまざまなテーマにて1本40分のプログラムを4回実施。毎年、和光一般公開はBSI以外のセンターなどでたくさんのイベントが開催されるので、本イベントに集まっていただけるか担当者は眠れぬ夜を過ごしましたが結果的には4回ともに満員御礼の大盛況。

1本は同じラボの研究者が映像やイラストを見せながら日本語で開催。ほか3本は外国籍研究者と日本人研究者がペアを組み、日本語と英語が混ざった会話で進行します。最後のペアはほとんど英語で進行しました。各回で、高校生など若い方が積極的に質問してくださったのが印象的でした。外国籍研究者も、これまでなかなか国内のイベントで研究者以外の方々と接する機会が少なかったのですが、今回の手ごたえをきっかけに、研究室を飛び出してもっといろいろなアウトリーチ活動をやってみたい、と意欲を燃やしていました。参加者の皆さんから研究者へパワーをいただき、ありがとうございます!

セミナーや講演会とは違ったカジュアルな雰囲気で脳科学を楽しんでいただけましたでしょうか。脳科学が街中のカフェや皆さんのご家庭でも話題にのぼるようになる日を目指して、今後もBrainサイエンスカフェを続けていきます。ご期待よろしくお願いします!

各カフェトークの概要をご紹介します。

カフェトーク1:脳を語ろう、過去・現在・未来 ~脳とこころ~

・スピーカー:トマス・マクヒュー & 中原 裕之

和やかな雰囲気の中で、トマス・マクヒューTL(TL:チームリーダー)がアメリカ育ちで海馬の研究をしているという自己紹介と、中原裕之TLの意思決定と学習、社会知性、脳の情報処理や脳型知能に興味をもって研究しているという自己紹介から始まりました。そのあと、中原さんが日本語と英語を切り替えながら、会場からの様々な質問にお応えするスタイルで進んでいきました。小中学生から大人の方まで多数の質問をいただきました。たとえば、「あるときふっと関係ないと思うような記憶が突然よみがえるのはなぜでしょうか」という質問へは、脳はさまざまな情報やパターンを重ね合わせながら覚えているので、一見関係ないと思うようなことでも、何かしら過去の記憶と似ていて呼び起こされることがある、というお話でした。あるいは「子供がTVゲームをするのは脳の発達に悪い影響があるのか」、「脳の機能を高める食べ物はあるのか」といった、誰もが気になる身近な質問もありました。単純にTVゲームや特定の食べ物だけの効果を実験で確認することは意外と難しいとのことです。たとえばTVゲームをしすぎることで、外で遊んだり人と話したり美しい景色を見たり、という人間の成長に必要なさまざまな機会を損失してしまう可能性があり、それらによる影響の方がむしろ大きいのでは、というお話でした。サイエンスカフェならではの会場と講演者の双方向コミュニケーションのある活発で楽しいひとときでした。

カフェトーク2:ヒトはどうやってヒトの顔を区別する? ~コンピューターも真似できない脳の顔認識処理~

・スピーカー: 佐藤 多加之 & 谷藤 学

私たちは顔によって人を識別し、その表情から相手の気持ちまでも推測するなど、優れた視覚システムを持っています。しかし、私たちは本当に外界の情報を常に正確に把握できていると言って良いのでしょうか。

画家が何やら抽象的な絵を描いているYouTube映像では、画家が「完成!」と言っても何の絵なのか誰もわかりません。でもその絵の上下をひっくり返してみると会場から「えーっ!」と驚きの声が。ありふれた画像でも逆さにしただけで途端にわからなくなってしまうのです。また、事前情報を与えられずに見ると全然わからないのに、一度わかってしまうとそうとしか見えなくなる現象も紹介しました。そのことから、私たちの視覚システムは外界を認識する際に事前情報(先入観とも言えます)も組み入れて処理していることがわかります。つまり、事前情報を利用できる状況とそうではない状況では、外界の見え方は大きく変わるのです。佐藤多加之研究員と谷藤学TLのトークは実際に参加したみなさんの視覚に強く訴える内容でした。

カフェトーク3:Watching inside the brain ~脳の中を見てみよう~

・スピーカー:エイドリアン・ムーア & 風間 北斗

研究テーマは異なるものの、ショウジョウバエを使った脳の研究をしているエイドリアン・ムーアTLと風間北斗TL。ハエにも脳があって、立派な五感が備わっているんです! という紹介からスタートしました。会場からは「ハエとヒトの脳に共通性はあるの?」「ハエのような小さな生き物の脳をどうやって観察するの?」といった質問が上がりました。「脳を構成する神経細胞の性質は似ていますし、細胞を蛍光タンパク質で光らせながら顕微鏡で観察できるんですよ」とムービーを見せながら答えるムーアさん。神経細胞の構造を東京タワーの構造になぞらえて、「どちらも部品をつなぎ合わせることで形作られていきますよね」という説明には納得です。一方、風間さんからは形作られた脳が匂いをどのように認識するかについて話題提供がありました。ハエの匂いに対する反応を詳しく調べるために、匂いや景色を変えられるバーチャルリアリティーまで作ってしまったのには驚きです! 匂いに対する神経活動もつぶさに解析し、今ではそれを見るだけでハエがその匂いを好きか嫌いかを言い当てられるそうです。素朴な質問が飛び交う、和やかな雰囲気のセッションでした。

カフェトーク4:Studying emotion to understand the mind ~感情とこころを科学する~

・スピーカー:ジョシュア・ジョハンセン & 加藤 忠史

カフェトーク4では、ジョシュア・ジョハンセンTLと加藤忠史TLがトークを行いました。加藤さんは元々精神科医で双極性障害(躁うつ病)の研究をしていますが、ジョハンセンさんも元々「心」に興味があり、心理学を専攻していた学生時代には、双極性障害の心理社会的研究に携わったことがあるとのことでした。カルフォルニア大学ロスアンジェルス校で、依存に関わる学際的な研究グループに関わったことなどから、次第に神経科学に興味を持ち、恐怖記憶のメカニズムなどの研究に携わるようになったそうです。理研BSIに応募したのは、奥様が日本人であったことに加え、多くの研究者と共に研究チームを組むことができる点に魅力を感じたそうで、現在も理研BSIの国際的な研究環境には満足しているとのことでした。ジョハンセンさんが行っているような恐怖記憶の研究は、PTSDなどの臨床的な課題にも直結しており、今後新しい診断法や治療法の開発にもつながるだろう、という展望を話し合いました。また、ご自身が双極性障害の治療をされているという方からは「薬はいつまで飲み続ければ治るのか」というご質問が投げかけられました。診察をしなければ確実なことは言えないが、糖尿病や高血圧の薬と同じで、長く付き合っていくものだと割り切ってしまえば治ったようなものだそうです。会場からは英語でもご質問をいただき、充実したセッションとなりました。

 

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