理化学研究所 脳科学総合研究センター(理研BSI)
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脳科学の人 研究者インタビュー

中谷 裕教

Name 中谷 裕教(なかたに ひろのり)
Position 客員研究員
Education 東北大学 工学部 電気情報系
BSI Lab 情動情報連携研究チーム
http://www.jst.go.jp/erato/okanoya/

代表的研究直感、将棋、コミュニケーション

脳における直感的で柔軟な情報処理に興味を持っています。コンピュータと脳はともに情報を処理するシステムですが、情報処理の特性は大きく異なります。例えばコンピュータは大量のデータをプログラム(事前に定められた情報処理の手順)に従って高速にかつ正確に処理することが得意です。一方脳は複雑な事柄の全体像を直感的に把握したり、状況の変化に対して臨機応変に対応したり、直感的で柔軟な情報処理に優れています。

ラボにてfMRIを使用し、脳の活動データを記録中
ラボにてfMRIを使用し、脳の活動データを記録中

BSIで行った研究テーマの一つに将棋棋士の直感に関するものがあります。将棋では一つの局面あたり約80通りの指し手の可能性があるので、たった三手先までの分析であっても80x80x80=512000通りの可能性を調べあげなければいけません。コンピュータ将棋は圧倒的な計算能力を活かして膨大な数の局面を分析することで指し手を決めています。しかし棋士は指し手の候補を直感で瞬時に絞り込むことができます。直感で候補手を二、三手に絞った後に「読み」と呼ばれる分析により指し手の決定を行います。つまり、コンピュータは徹底的に分析を行った後に答えを決定するのに対して、棋士は直感で答を見つけてから分析を行います。分析と答えの順番がコンピュータと棋士では反対になっていて、分析より先に直感で答えを見つけるのが棋士の思考の特徴です。日本将棋連盟と富士通研究所の協力を得て棋士の脳活動を調べたところ、棋士の脳は将棋の局面の堤示に対して素早く反応する、アマチュアとは異なる脳の部位が活動する、など直感に関わる脳のメカニズム理解のための手掛かりを得ることができました。

現在はコミュニケーションを題材にして研究を行っています。他人と接する時、振舞や言葉遣いは相手や状況に合わせて変化します。相手との関係性やその時の文脈を意識的/無意識的に読み取って振舞を柔軟に変化させているのですが、その柔軟な情報処理を実現している脳の仕組みの解明を目指しています。

  • 将棋プロジェクトのサイト
    *中谷さんは山口陽子チームで紹介されています!
  • 研究内容を紹介した本 → “将棋と脳科学” クバプロ出版社
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