理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI) Brain Science Institute



IMAGE

BSIセンター長の就任にあたって

脳科学
総合研究センター長

甘利 俊一


 脳は永年の進化の結果できあがった複雑極まりないシステムです。これがわれわれ人間の情報処理を司り、さらに精神活動の根源にあります。脳を理解することは人を理解することです。脳は巧妙極まりない分子の働きの上に驚くほどの能力を持つ情報システムを築いてきましたから、これを解明するには、生物科学はもとより、人間科学、情報科学を融合したアプローチが必要になります。21世紀の脳科学は、総合科学として確立されなければなりません。
 理研BSIはこれを実現すべく5年半前に創立され、これまで私たちは無我夢中で研究活動を続けてきました。この結果、BSIは学際的かつ国際的な脳科学の研究機関として、その存在を国の内外に広く知られるようになりました。これはもとより、BSI研究者のすばらしい研究の成果に負うものです。
 しかし、道はまだ険しいといわねばなりません。国際的な研究機関としては、まだまだ中途の段階です。学際的な研究を目指していますが、これが実るのはまだこれからです。こうした問題は、われわれの研究を通じて解決して行く他はありません。
 これまで私は、恵まれた環境の下で自分の研究に励んできました。これからは、それに加えてセンター長としての任務と責任を果たさなければなりません。私の任務は、21世紀の脳科学の先頭を走る真に国際的かつ学際的な研究の中心機関として、世界に聳えたつようなBSIを作りあげることです。このために、研究者が自分の能力を十二分に発揮できるような環境と条件を作り出すことが私の責任です。BSIは大学などの教育研究機関とは異なる使命を与えられていますから、条件に恵まれているとはいうものの、責任も重く圧迫感も強いでしょう。それを跳ね除け、研究者がその能力を十二分開花させ、力を振るえるようにしたいものです。
 みなさん、新しい発展を目指してともに進もうではありませんか。



IMAGE

脳科学総合研究センター BSIへの期待

(前)脳科学
総合研究センター所長

伊藤 正男


 1997年秋、現中央棟の敷地に天幕を張って開所式を行ったことが夢のようです。脳科学に特化した世界最大規模の研究センターを建設しようと集った当時の関係者の熱気は大変なものでした。以来、BSIは順調に成長し、研究室は43、職員も440名にまでなりました。私はこの度、定年の定めにより、開所以来勤めていたセンター所長の職を退くことになりました。これまで頂いた大勢の方々のご助力にこころから感謝します。今後は特別顧問として留まり、甘利俊一新センター長のリーダーシップのもと、BSIがさらに発展するのを見守りたいと思います。
 BSIの研究活動の高さは研究発表に現れています。1998-2002年の5年間に1172の英文原著論文が発表されました。総説も112篇を発表し、特許出願は141におよび、6件がライセンス化されました。BSIからの発表論文について800件近い引用を受けたチームリーダーがあり、他に200件以上引用されたチームリーダーが4名います。論文1篇あたりの平均引用数が20-32に及ぶチームリーダーも5名います。これらの成績はBSIの国際的に高い研究水準を示しており、この水準をさらに高めて行けば、やがて科学の歴史に刻まれ、社会に大きな恩恵をもたらす目覚ましい成果が挙がると確信しています。
 BSIでは従来実現しにくかったことを思い切って試みてきました。一つは高い学際性で、生物学、医学、農学から、数理、工学、情報技術までの広い分野にわたり、その密接な相互作用から斬新な発想や強い総合効果が生まれる環境を作りました。第2は高い国際性で、7名のチームリーダーを始め、100名近い外国人研究者、研究支援者を擁し、BSI内では英語が共通語として日常に使われています。第3に、研究者としての創造性の高い30歳代の若手に最大のチャンスを与えることを重視し、実際、BSIの研究者の平均年齢は34歳に保たれています。
 苦い経験もありました。1999年の毒茶事件と2001年の経済スパイ事件は理研全体に大変な迷惑をおかけし、慚愧の至りですが、近代的な研究所における安全管理、危機管理や知的所有権の問題の重要性を思い知らされ、対応を促進する重要な転機になりました。その他、研究倫理の面でも大きな進歩がありました。BSIが21世紀型研究組織の優れたモデルであり続けることを期待しています。



BSIは平成15年度から装いも新たに
 脳科学総合研究センターは、これまでの「脳を知る」、「脳を守る」、「脳を創る」の3領域に加え、新たに 「脳を育む」領域を設置するなど、新しい研究体制のもとに新年度を迎えました。
 「脳を育む」領域では、脳の発達メカニズムの解明を目指した研究を進めることとしており、社会的にも大きな期待が寄せられています。
 平成15年度からの新しい研究体制は次ページの通りです。


  NEXT

理研BSIニューストップ

理研BSIトップ
BACK
理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI)
Copyright All Rights Reserved.