理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI)Brain Science Institute



第2回BACの開催

 BSIの運営方法、研究の方向性や進捗状況等について、外部有識者から適切な助言、提案をいただくための第2回脳科学アドバイザリーカウンシル(BAC)が3月17日(水)~19日(金)に開催されました。脳を知る、守る、創るの各領域及び共通領域から、国内外の一流研究者(外国人9名、日本人11名)の委員のうち、16名が出席しました(委員長はMichel Cuenod博士(国際HFSP推進機構事務総長))。

 1日目には、各委員による専門領域を中心にした研究室視察及び研究員へのインタビュー、BSIのこの1年間の活動状況報告が行われました。2日目には、各研究グループの研究の進捗状況及び今後の研究計画の報告と質疑、研究室訪問と研究者との討論が行われ、最終日には委員のみによる全体討議、報告書のとりまとめが行われました。

 報告書では、まず、BSIの設立以降、昨年のBACで提言された多くの事項が迅速かつ的確に実現されていること、特に多数の新しい研究チームの設立、リトリートや数々のフォーラム、セミナーの開催及び外国人研究者の受け入れ状況は高く評価されました。その他、報告書の概要については以下の通りです。


BAC報告書がCuenod委員長より
伊藤所長に手渡される
  • グループディレクターの責任の性格の再確認、特に各研究チームの独立性を維持しながら、グループ全体や若手研究者に的確な指導(mentor-ing)が行えることが重要

  • 研究リーダーの採用方式を一層フォーマルなものとし、選考に際してはサーチ委員会がより多くの外部専門家の意見を聞くよう考慮すること

  • 研究リーダーの採用の際に、全ての研究領域を満たすことより、現在ある研究領域との一貫性や、ある特定の研究分野の一定規模(critical mass)以上の確保を優先すべき

  • 研究スペースや予算の配分にはこれまで以上に弾力性を持たせること

  • Human Genome Project との係わりを重くみて、必要な場合には cell biologist など専門の研究者を採用すること

  • 言語とコミュニケーション、アーキテクチャ及びハードウェアシステムに関する新研究グループの設置を支持する

  • 外国人研究者とその家族に対する我が国の文化・生活の側面に配慮した、より一層の受け入れが必要

新たな研究チームが発足

 BSIでは逐次新たな研究チームを設立していますが、今年4月には老化・精神疾患研究グループを新設し、病因遺伝子研究グループ等の2チームがこのグループに移りました。さらに5月には第3番目のチームとして分子精神科学研究チーム(吉川武男チームリーダー)が発足しました。

 同研究チームは、高次神経機能に影響を与える精神分裂病や躁うつ病の病因解明にあたり、疾患の発症しやすさに影響を及ぼす体質的因子のDNAの変異に注目して、研究を進めます。

 近年、精神疾患の感受性に影響を及ぼす遺伝子の存在領域がマップされてきましたが、その病態が複雑であるがゆえに領域を狭めることには困難を伴います。しかしながら、ヒトゲノムプロジェクトの進展等周辺科学の成果を取り入れ、感受性遺伝子(危険因子)を明らかにしていく予定です。

中央研究棟(第 I 期)完成

 中央研究棟(第 I 期)の建設工事が予定通り4月中旬に完了しました。建物は、地下1階、地上9階(地上44m)、延床面積は15,500m2で、理研の和光キャンパスでは高い建物の出現となりました。

 これまで和光キャンパス内に分散していたBSIの研究チームおよび新設のチームを含めた計13チームと、所長室、研究推進部、情報センターなどが、5月末までに中央研究棟への引越しを完了し、本格的な研究活動を開始しました。

 なお、中央研究棟(第 II 期)の建設工事もすでに着工しており、施設整備は順調に進んでいます。

ロダンアカデミー国際シンポジウムの開催

 スイスに本部をおくロダン・レメディエンシス・アカデミーでは毎年、失語症の基礎研究に関する国際シンポジウムを開催しておりますが、本年は4月6日~8日の3日間、「言語理解・脳のメカニズムとその異常」と題するシンポジウムが、BSIとの共催により、理研和光キャンパスにて開催されました。

 言語に関する研究は、今後の脳科学における重要なテーマであり、BSIにおいても将来の研究分野として取り上げる計画から、今回の共同開催が実現しました。

 国内外の第一線の研究者21名による講演とポスターによる発表があり、BSIの研究者を含め230名の参加者との間で活発な討論がなされました。

 これにより、この領域の研究状況が把握されるとともに、言語発達と脳の可塑性の問題や言語の構成と表現の脳内メカニズムの研究について、将来の方向性が明確にされ、我が国における言語理解の研究にとって大変示唆に富んだものとなりました。


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