脳科学の人 研究者インタビュー
高校生のみなさんへ
科学は必ず時とともに進歩します。後から来る人の方がより多くの知見を手にすることができ、それを元に学問として前に進めて行くわけです。
さて私はこれまで遺伝子や蛋白質の機能解析に携わってきましたが、遺伝子情報が生物の設計図ということを考えると、その一つ一つの機能を明らかにして行くことは生物とは何かという問いに対する有力な解法に思えます。ですが単純に動物や植物の種類と各々の遺伝子数を考えるだけでもその数は膨大であることが分かります。そしてそのように対象とするべきものの数が大きくなってくると学問として横には広がり易いのですが、前には進みにくくなります。つまり個々の知見を有機的につなげて、その総和として高次なことを説明することがとても難しいのです。例えると、各遺伝子機能解析は辞書の
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研究室近くの廊下にて
私は研究者になることが良いことだと言うつもりはまるっきりありません。それに遺伝暗号が解かれてからたった50年です。まだ多くを語るには語彙が絶対的に不足しているのかもしれません。ただそれでも、できると思う人には是非是非その世界を見せて頂きたいのです。新しく才能のある人が出てきて自分の研究分野が今以上に発展して行く様を見てみたいなあって思います。それにもし時代が充分に満ちていれば、アーベルの時代にガウスやガロアがいたように、シュレディンガーとハイゼンベルグが同時代にいたように、きっとそれは周りの才能とも共鳴して飛躍的な進展をもたらしてくれることでしょう。