理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI)Brain Science Institute



プレセニリン1の結合タンパクとその機能

 アルツハイマー病研究チーム
 これまでの家族性アルツハイマー病の原因遺伝子であるプレセニリン1(PS1)研究では、PS1変異は APP代謝に影響を与え、 Ab42 の生成を増大させることが明らかになっている。今回の一連の報告で、我々はPS1が相互作用する蛋白質をPS1抗体によって、PS1と共沈する蛋白質としてglycogen synthase kinase-3b (GSK-3b), tau, b-cateninをヒト脳サンプル及び培養細胞から見い出した。GSK-3b とtauは、PS1のアミノ酸250−298の部分で相互作用しており、b-catenin はPS1のアミノ酸322−450の部位で相互作用していることが明らかになった。
変異PS1はtauや b-catenin との親和性を変化させないが 、GSK-3b との親和性を増大する。
tau と b-catenin は GSK-3b の基質である。変異PS1の発現によって、tauの GSK-3b によるリン酸化の昂進が観察された。

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プレセニリン1はGSK-3Bとその重要な基質を結びつける分子鎖として働く。

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 また 、GSK-3b の活性によって調節される可溶性画分の b-catenin量は、PS1の発現によって減少が観察された。すなわち、PS1は GSK-3b と結合し、その基質との相互作用を仲介する役割を果たしていると考えられた。これまでの報告による Ab42 の生成増大も、 PS1/GSK-3b 複合体が役割を果たしていると推測される。

  1. Takashima, A., Murayama, M., Murayama, O., Kohno, T., Honda, T., Yasutake, K., Nihonmatsu, N., Mercken, M., Yamaguchi, H., Sugihara, S., Wolozin, B. Presenilin 1 associates with glycogen synthase kinase-3b and its substrate tau.
    Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 95, 9637-9641(1998).

  2. Murayama, M., Tanaka, S., Palatino, J., Murayama, O., Honda, T., Nihonmatsu, N., Wolozin, B., Takashima, A. Direct association of presenilin-1 with b-catenin.
    FEBS lett. 433, 73-77(1998).



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