理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI)Brain Science Institute



アルコールによる鎮痛の分子メカニズム
─エタノールが GIRK チャネルを直接開口─


 情動機構研究チーム/細胞内情報研究チーム
情動機構研究チームと細胞内情報研究チームは、新潟大学脳研究所および早稲田大学との共同研究によって、飲酒時に痛みの感覚が鈍る現象が、エタノールによる G 蛋白質活性型カリウムチャネル(GIRK チャネル)の活性化によって説明されることを示しました。
 GIRK チャネルは、脳と心臓に多く存在し、神経細胞の興奮性や心拍数の制御において重要な働きをしています。今回、このチャネルが飲酒時血中濃度のエタノールによって直接活性化されることを、アフリカツメガエル卵母細胞蛋白質発現系を用いた電気生理学的解析によって明らかにしました。
 さらに、脳型 GIRK チャネルに変異を有するウィーバーミュータントマウスを用いた行動生理学的解析により、エタノールによる鎮痛が GIRK チャネルの開口によって引き起こされることを見い出しました。
 これらの研究成果は、アルコールの脳機能への影響を解明する上で大変重要であり、今後、GIRK チャネルを標的とした新規鎮痛薬・アルコール中毒治療薬の開発にも繋がるものと期待されます。



鎮痛効果測定テスト
正常マウスはエタノールを投与すると、熱い金属板に乗せてもあまり熱がりませんが、GIRK チャネルに変異を持つウィーバーミュータントマウスでは、エタノールの鎮痛効果がほとんど現れず、マウスは熱さですぐに飛び出そうとします。

Kobayashi, T., Ikeda, K., Kojima, H., Niki, H., Yano, R., Yoshioka, T., Kumanishi, T.
Ethanol opens G-protein-activated inwardly rectifying K
+ channels Nat. Neurosci. 2, 1091-1097, December (1999)



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