理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI) Brain Science Institute



軸索成長円錐における神経接着分子L1のリサイクリング

 発生・分化研究グループ
 発生・分化研究グループの上口裕之上級研究員と米国Case Western Reserve UniversityのVance Lemmon教授は、軸索成長円錐における神経接着分子L1のリサイクリングと軸索伸長との関連性を明らかにしました。
 L1は主として伸長過程の軸索とその先端部(成長円錐)に発現する膜蛋白です。軸索が伸長するためには(成長円錐が前方へ移動するためには)、成長円錐先端部での強い接着と成長円錐後部での脱接着が必要です。今回の研究では、このような細胞接着の極性が部位特異的なL1のエンドサイトーシス(細胞内への取り込み)およびリサイクリングにより形成・維持されうることが示されました。成長円錐後部でエンドサイトーシスされたL1は、微小管依存性小胞輸送により成長円錐先端部細胞膜へリサイクルされます。リサイクルされたL1は、アクチン後方移動とのカップリングにより成長円錐表面を後方へ移動します。このように、L1は成長円錐内外をあたかもキャタピラの様に運動することにより、成長円錐を前方へ推進します(図参照)。
 さらに、L1の細胞内輸送を担う微小管の局在は、成長円錐に発現する接着分子(L1、インテグリン、カドヘリンなど)へのリガンド結合によって制御されています。以上のように、成長円錐は周囲環境の変化に対応して接着分子のリサイクリングを制御しており、これが成長円錐の運動性を決定する重要因子であると考えられます。


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Kamiguchi, H., Lemmon, V. Recycling of the Cell Adhesion Molecule L1 in Axonal Growth Cones. J. Neurosci. 20, pp3676-3686, May (2000)



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