理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI)Brain Science Institute



小脳IP3 受容体の機能調節にカルシウム ─ カルモジュリン系が関与する

 発生神経生物研究チーム
 発生神経生物研究チームの御子柴克彦チームリーダー、山田麻紀基礎特別研究員と分子神経形成研究チームの古市貞一チームリーダーらは、小脳の IP3 受容体機能調節にカルシウム─カルモジュリン系が関与することを初めて明らかにしました。

 イノシトール1,4,5-三リン酸(IP3)は、神経伝達物質や神経栄養因子などの細胞刺激によって産生され、細胞内 Ca2+ ストアにある IP3 受容体(IP3 活性化型 Ca2+ チャンネル)に作用してストアから細胞質内への Ca2+ 放出を誘導し、神経機能(シナプス可塑性、神経突起の伸張など)や神経疾患(てんかん発作、神経細胞死など)などに深く関与します。IP3 受容体の活性化は一過性の Ca2+ 上昇を惹起するだけではなく、放出された Ca2+ 自体によって反復的な正と負のフィードバック制御(約0.5μMをピークに、それぞれ低 Ca2+ と 高Ca2+ で起こる二相性制御)を受け、Ca2+ waveや Ca2+ oscillationといった時空間的な Ca2+ dynamicsをもたらします。しかし、その分子レベルの機序については不明な点が多く残っていました。

 今回の研究では、小脳から精製したタイプ1 IP3 受容体を人工平面脂質二重膜上に再構成することで、基本的に Ca2+ は IP3受容体には正に働くこと、カルモジュリンが存在すると、高 Ca2+ 域では負に作用することを単一チャンネル記録レベルで明らかにしました。すなわち、IP3 受容体の高 Ca2+ センサーは脳に豊富に存在するカルモジュリンであり、高 Ca2+ で活性化された Ca2+ 結合型カルモジュリンが IP3 受容体に直接結合することで、 IP3 受容体を不活性化することが示されました。

 なお、これらの研究成果は東京大学医科学研究所、東京医科歯科大学、科学技術振興事業団との共同研究によるものです。

Michikawa, T., Hirota, J., Kawano, S., Hiraoka, M., Yamada, M., Furuichi, T., Mikoshiba, K.
Calmodulin Mediates Calcium-Dependent Inactivation of the Cerebellar Type 1 Inositol 1,4,5-Trisphosphate Receptor
Neuron, Vol. 23, pp. 1-10, August (1999)


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