理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI)Brain Science Institute



BSIサマープログラム1999を開催

 去る7月26日より8月6日までの2週間にわたり、国内外から若手研究者約50名と MIT の利根川進博士をはじめとする、脳科学研究の第一線で活躍する講師16名を招待して、第1回のサマープログラム集中講義コースが開催されました。
 同プログラムは一流の講師陣による講義が中心ですが、それ以外の時間を最大限利用して、研究室訪問、参加者による研究成果発表と自己紹介の時間を十分に取りました。また週末には日本の文化に触れる機会なども設け、これらを通じて世界の10ヵ国から参加した研究者と BSI の研究者が活発に交流することができました。参加者からは盛りだくさんの内容に対する歓迎の声や、「また参加したい」との声が多く聞かれました。さらに講義コースと並行して BSI の各研究チームに約2ヵ月滞在し研究を行う実習コースが実施され、参加者のための技術習得や研究の進展に大きな成果を挙げると共に、BSIとの将来の共同研究のきっかけともなりました。

 欧米の一流大学や研究機関では、このようなサマープログラムは若手研究者の育成や研修の一環として通常行われています。しかし、日本ではまだ馴染みは薄く、その企画や運営では多くの困難も伴いましたが、BSIの特徴を生かした独自のサマープログラムとなりました。参加者や内部からの声を聞くにつけても実施した意義は大きく、今後も継続的に行うことにより、脳科学研究を志す若手研究者の育成、ひいては世界の神経科学研究の進歩に貢献するため、少しでもお役に立てればと考えています。



サマープログラムの講義風景
MEG装置の導入


MEG装置

 今年3月、脳科学東研究棟地下1階の脳機能ダイナミクス研究チーム(Andreas A. Ioannides チームリーダー)に脳磁図(magnetoencephalo-graphy: MEG)装置が設置されました。

 MEGは、見る・聞く・考えるといった正常な脳の活動によって発生する微弱な生体磁気を測定します。MEG によりミリ秒単位の高い時間解像度と高い空間解像度(少なくとも脳の表面に関しては1cm以内)で脳の活動を研究することが可能です。

 脳の発生する地磁気の10億分の1程度という微弱な磁界の検出を可能にするために、装置は磁気シールドルーム内に設置されており、超伝導量子干渉素子(SQUID)を用いて脳磁界を測定します。同装置では151個の SQUID センサーがヘルメット状に配置されており、頭部全体の磁界計測を行うことができます。また同時に 64ch の脳波を測定することが可能です。 近い将来、MEG は fMRI 等の他の脳機能の画像化手段と共同して、脳における情報処理の理解に大きく貢献することが期待されています。

運動系神経変性研究チームの発足

 去る7月1日、病因遺伝子研究グループの3番目のチームとして、運動系神経変性研究チームが発足しました。チームリーダーの高橋良輔博士は前任の東京都神経科学総合研究所より一貫して神経変性疾患とアポトーシスを対象とした研究を行っています。

 同チームは筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病などの運動系の障害を特徴とする神経変性疾患が発症する分子メカニズムを、細胞及び動物レベルでの疾患モデルの作製・解析を通じて明らかにすることを目指します。

 また最近の研究で、神経変性に細胞の能動的な自爆機構であるアポトーシスが深く関与していることがわかってきました。そこで神経変性過程に関わるアポトーシスのシグナル経路の解明、さらにはアポトーシス阻害因子を用いた神経変性疾患治療の基礎的研究にも取り組みます。


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