理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI)理研BSIニュース No.1(1998年8月号)



MITとの協力と谷垣前大臣のご訪問
 脳科学総合研究センター(BSI)は、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)との研究協力と脳科学の展開についての一般の理解の促進を図ることを目的として、1998年4月27日〜28日、東京及び理化学研究所和光本所において「脳科学における挑戦」と題した、RIKEN BSI-MIT共同国際シンポジウムを開催しました。
MIT での会議の様子
MIT での会議の様子
左から利根川進教授、谷垣禎一前大臣
右からCharles M. Vest 総長
 米国より利根川進教授をはじめとする4名のMIT教授陣に加え、Stephen F. Heinemann 教授(ソーク研究所)、Mark F. Bear 教授(ブラウン大学)らの参加を得、さらにBSIからも伊藤所長他6名のチームリーダーらが参加し講演が行われました。このシンポジウムには総勢600名の参加があり、各研究者の発表に対して積極的な質疑が寄せられました。
 また、5月2日には谷垣禎一前国務大臣科学技術庁長官が MIT を訪問され、Charles M. Vest 総長、Robert J. Birgeneau 学部長、利根川教授との会談を行い、脳科学研究協力を進めることに関して基本的に合意しました。
 今後においては、BSI及びMIT双方の持てる能力を活かし、国際共同チームにより脳科学の進歩に寄与しうる研究、技術開発を進めていく予定です。
脳科学アドバイザリーカウンシル(BAC)を開催
 BSIでは、その運営方法や研究計画と成果、研究の進め方等について幅広く意見を聞くとともに、BSI全体の総合的評価を毎年受けることを目的として、国内外の19名の学識経験者、専門家で構成するアドバイザリーカウンシル(委員長はMichel Cuenod HFSP 事務総長)を設けています。その第1回会合が2月19日〜20日に開催されました。  2月18日の事前ミーティングで審議方法の検討を行った後、第1日目の19日には、BSIの概要と各研究グループの研究計画が説明され、研究室視察と現場での討議が実施されました。第2日目には、全メンバーで自由討議と結果のとりまとめが行われました。 報告書の概要は以下の通りです。 BACの会議風景
 BACの会議風景
  • BSIの設立は世界的な脳科学研究の発展にとり重要なステップであり、継続的な拡大が望まれる。
  • 3つの大きな領域の設定、各領域の研究計画や研究体制は適切であり、実験脳科学とモデル化研究が並行して展開されていることを高く評価。
  • 今後、BSIにおいて言語とコミニュケーション、老化制御、修復機構、神経心理学、疾病関連の研究等の展開を勧告。
  • 国内外の大学や研究機関との連携強化、とくに臨床医学との協力、ATDC の発展とその成果の産業界への移転を要望。
  • 若手研究者のトレーニングや受け入れの拡大、一般社会への啓発活動の強化。
  • BSIの活動は各国の脳科学研究推進のモデルとなりうるものであり、今後の発展が大きく期待される。
チームリーダーの公募
 BSIにおけるチームリーダーの選抜は、公募を基本として、広く国内外から国際級の優れた人材を招くこととしています。  今年度はこれまでに、ニューロン機能研究グループの1人を決定し、病因遺伝子研究グループで1人、先端技術開発センター(ATDC)で2人のチームリーダーを近く選抜する予定です。
引き続き、発生・分化研究グループ、脳型デバイス・ブレインウェイ研究グループ及びニューロインフォマティックス関連で、合計4人のチームリーダーを募集いたします。  BSIでは最終的に58チームの開設を計画しており、幅広い分野、様々な組織からトップサイエンティストたるべき人材を募っていきたいと考えています。
また、研究員、テクニカルスタッフおよびアシスタントの方々も各方面から広く参加を期待しています。随時 Web page(http://www.brain.riken.jp/index_j.html)をご参照下さい。
Invited Seminar Seriesの開催
 BSIでは、世界から一流の研究者を招聘し講演してもらうことにより、研究者相互の知的触発と国際交流の促進を図ることを目的としてInvited Seminar Seriesを開始しました。  今年3月に開催された第1回目では、Basel 大学教授John G. Nicholls氏を講師に迎えて「Regeneration of connections in immature mammalian spinal cord after injury」についての講演が行われました。
その後、第2、3回はそれぞれ、オックスフォード大学の
Prof. Peter Somogyi (Compartment-alization and variability in the location of GABA and glutamate receptors)Hong Kong University of Science & Technology Prof. Nancy Ip (Trophic Factors and Neuronal Development) を講師に迎えて開催しました。  Invited Seminar Series では講演のほか、研究現場の視察、研究者との交流を行うとともに、BSI幹部との懇談の機会を設けることにしており、年10回程度開催を予定しています。
理研ベンチャーの設立
 理化学研究所では、研究成果の実用化、産業界への技術移転を促進する目的で、本年度より研究者の研究成果をベースにしたベンチャー企業を支援することを決定しました。
初年度は理研ベンチャーとして6社がスタートし、うち1社がBSIの脳創成デバイス研究チーム(市川道教チームリーダー)から出発したブレインビジョン社です。  同社は脳の新計測技術を開発し、脳研究を技術とビジネスサイドから推進することを目指したユニークな企業です。
研究成果を社会に還元することは、BSIの一つの目的であり、理研ベンチャーがその役割の一端を担うことが期待されています
特に、脳を守る領域や脳を創る領域の研究成果は実用化によって社会に大きく貢献できる可能性があります。  今後、第2、第3のベンチャー企業がBSIから誕生することが期待されます。
脳科学中央研究棟の建設進む
 現在、BSI内で発足している23の研究チームは脳科学西研究棟、東研究棟等において研究を行っています。  今後研究チームが増加するのに伴い、脳科学中央研究棟を建設しており、その第1期建設工事が急ピッチで施工されています。8月現在、9階までの鉄筋工事が完了し、来年4月の完成をめざしてコンクリート工事・設備工事が行われています。

 脳科学中央研究棟は、BSIの中核施設となるもので、第1期工事に引き続き、来年の3月には第2期工事に着工する予定です。平成12年の夏には第2期工事が完了し、既存の研究施設と合わせて延床面積3万平方メートル以上の研究施設群が和光キャンパスの中に誕生します。
建設中の脳科学中央研究棟
 建設中の脳科学中央研究棟
 完成後の中央研究棟には38チームの収容が可能で、これにより施設全体で当初計画の58チームを収容できることになります。BSIでは今後も精力的に研究体制の拡充に努めていきます。
伊藤所長、レジオン・ドヌール勲章シュバリエを受賞
授賞式の挨拶
 授賞式の挨拶
 伊藤正男脳科学総合研究センター所長が、フランスのレジオン・ドヌール勲章シュバリエを受賞し、1998年6月26日、フランス大使館においてウーブリュー駐日大使より伝達式が行われました。
今回の受賞は、科学技術を通じて長年にわたり日本、フランス両国の関係発展のために貢献したことに対して贈られたものです。  またこれより先、伊藤所長はフランス科学アカデミー外国人会員に選ばれました。

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