理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI) 理研BSIニュース No.10(2000年12月号



体性感覚野の正常な発達にはNMDA型グルタミン酸受容体の機能が必須

 行動遺伝学技術開発チーム
 神経回路ダイナミクス研究チーム
 行動遺伝学技術開発チーム(チームリーダー:糸原重美)と神経回路ダイナミクス研究チーム(チームリーダー:Thomas Kn嗔fel)は、米国ルイジアナ州立大学、マサチューセッツ工科大学との共同研究によって、体性感覚野が正常に発達するためには、NMDA型グルタミン酸受容体が重要な働きをすることを明らかにしました。  マウスの大脳皮質体性感覚野第4層の神経細胞は、生後1週間のヒゲからの入力のパターンに従って集合し、バレルとよばれる特徴的な構造を形成します。バレル形成は、哺乳類の大脳皮質発達の基本原理を理解するための重要なモデル系として注目されています。しかし、これまで実験技術上の制約のため、研究が遅れていました。  本研究では、まず、Cre/loxPという新しいDNA組み換えシステムを応用し、マウスの大脳皮質の興奮性神経細胞でのみ目的の遺伝子をノックアウトする手法を開発しました。そして、その手法を用いて、大脳皮質特異的にNMDA受容体の遺伝子をノックアウトしました。そのマウスを解析したところ、成体になっても、バレルができないことがわかり、バレル形成におけるNMDA受容体の役割を明らかにすることができました。この結果 は、今回開発された手法とともに、人間を含めた哺乳類の大脳皮質が生後どのように発達するかを、遺伝子の働きのレベルで理解するための強力な手がかりとなることが期待されます。


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Cre/loxpシステムによる大脳皮質特異的 NMDAR1ノックアウト

Iwasato, T., Datwani, A., Wolf, A. M., Nishiyama, H., Taguchi, Y., Tonegawa, S., Kn嗔fel, T., Erzurumulu, R. S., Itohara, S. Cortex-restricted disruption of NMDAR1 impairs neuronal patterns in the barrel cortex Nature Vol. 406, 17, pp726-731, August (2000)



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