理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI) 理研BSIニュース No.10(2000年12月号



方位コラムにおける特異点の分布から視覚野内側方結合の異方性を予測

 視覚神経回路モデル研究チーム
 大脳皮質視覚野のニューロンは、視覚像の輪郭線の傾き(方位)に選択的に反応し、大脳皮質面 に沿って隣り合うニューロンの最適反応方位は連続的に変化することが知られています。この最適方位 のパターンは、その点の周りで方位が180度回転する特異点の存在によっても特徴付けられます。  これまで、サルやネコの17野からの光計測実験では、右巻きと左巻きの特異点が交互に配列する傾向にあることが指摘されていました。そこで私たちは、内因性光計測法を用いて、ネコの視覚野である17野と18野の境界付近で、方位 に関する特異点の分布を詳細に調べてみました。その結果、境界付近では同じ回転方向の特異点が境界に平行に配列する傾向にあり(図A)、この傾向は統計的に優位 であることが確認されました。このような配列パターンは、17/18野境界への方位コラムの直行性を最大化するように形成されるものと考えられます。そこで、簡単な方位 コラムのモデルを用い、皮質内結合に異方性を仮定してシミュレーションを実行したところ、実験的に得られた特異点配列の傾向を再現することができました(図B)。このことから、領野の境界近傍では側方結合に異方性があることが示唆されます。


図A: 光計測によって得られた方位 コラムのパターン。点線で挟まれた領域は、17野と18野の遷移領域を表します。最適方位 は色によって表現されています。
図B: 紙面上下方向に興奮性結合が伸びている場合のシミュレーションから得られた方位 コラムのパターン。左右方向に同じタイプの特異点が並ぶ傾向が見られます。


Ohki, K., Matsuda, Y., Ajima, A., Kim, D.-S., Tanaka, S. Arrangement of Orientation Pinwheel Centers around Area 17/18 Transition Zone in Cat Visual Cortex Cerebral Cortex 10, pp593-601, Jun (2000)



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