理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI) 理研BSIニュース No.11(2001年2月号)



大脳視覚連合野(下側頭回と上側頭溝周辺皮質)の線維結合関係に新たな概念

 神経構築技術開発チーム
 マカクザル大脳皮質側頭葉の下側頭回前方部皮質(TEad 野とTEav 野)は第一次視覚領の高位 に位置付けられる有線外野視覚領皮質で、物の視覚識別、認知に重要な働きを担っています。今回、神経構築技術開発チームの K. S. サリームらは認知機能表現研究チームと共同で、この領域と上側頭溝(STS)皮質の線維結合をトレーサー法によって詳しく解析し、TEad 野とTEav 野は結合様式からみて、はっきり二分されていることを示しました。
 TEad 野は STS 皮質前方部の上壁と強く結合しますが、それに対して TEav 野はその下壁と結合します(図参照)。従来、文献によれば TEad 野は STS 前方皮質の下壁に結合しており、頭頂葉皮質や前頭前野、上側頭野が STS 前方皮質の下壁と結合するとされていました。本研究所見はこれを改めるものです。STS 前方皮質上壁は聴覚刺激や体性感覚刺激、視覚刺激に応答するニューロンが存在するので、上側頭多感覚野(STP: superior temporal polysensory area、図参照)と呼ばれている領域です。今回の所見は、STPの多様な知覚表現プロセスは TEav 野よりも TEad 野とより強く関連しており、他方、STS 前方皮質下壁領域における情報処理は、TEad 野とは全く異なり TEav 野と機能的な連関を持っていることを示唆しています。


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Saleem, K. S., Suzuki, W., Tanaka, K., Hashikawa, T. Connections between anterior inferotemporal cortex and superior temporal sulcus regions in the macaque monkey. J Neurosci 20, pp5083-5101 (2000)



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