理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI) 理研BSIニュース No.12(2001年5月号)



前頭葉前部皮質のニューロンが情報カテゴリー化に最適化されていることを解明

 RIKEN-MIT 脳科学研究センター
 注意制御神経機構研究チーム
 カテゴリーとは、「私たちが経験することに対し当てはめる」という意味を持ちます。例えば、一口に「椅子」といっても様々な形や色、大きさなどが存在します。それにもかかわらず、私たちは部屋に入ると瞬時にそこにある物を椅子や机、マグカップなどと認識します。つまり、カテゴリーは思考にとって必要不可欠なものです。意味付けがなければ、私たちの単純な認識は何の役にも立ちません。しかし、 脳がどのようにこれらの作業を成し遂げるのかは、これまでほとんど解明されていませんでした。
 今回の研究で、RIKEN-MIT 脳科学研究センターのフリードマンらは、猿に一連のコンピューター画像を猫や犬として分類するよう訓練しました。訓練に使用された画像は様々な猫や犬の「変異型」、つまりそれぞれを混合したものでした。例えば、60%が猫で40%が犬である画像や、40%が猫で60%が犬である画像などが使用されました。訓練の結果 、猿はこれらを正確に猫あるいは犬と分類できるようになりました。 カテゴリーの表現と神経の相関作用は、複雑な思考や行動に必要不可欠な皮質野である前頭葉前部の皮質で発見されています。今回の研究では上記の猿の訓練結果 を得て、カテゴリー情報は単一ニューロンレベルで表現される、つまり単一ニューロンがそれぞれの外見にかかわらず、同一カテゴリーからの刺激に対して等しく反応することを解明しました。
 カテゴリーの神経レベルでの表現は、学習の結果生じます。猿は猫や犬を前もって知っていたわけではありません。新しいカテゴリーに割当てられた刺激により再教育されたため、前頭葉前部のニューロンは以前の猫や犬というカテゴリーを表す代わりに、新しいカテゴリーをコードしたのです。
 いかに早くこのような表示が形成され再修正されるかは、今後の研究課題ですが、これは私たちがこの世界を意味のある概念に分類するプロセスと明らかに関連していると思われます。

 
100%猫の3つの基本型と100%犬の3つの基本型、及び基本型の犬と猫の混合比を変えた形態刺激

Freedman, D. J., Riesenhuber, M., Poggio, T., Miller, E. K. Categorical representation of visual stimuli in the primate prefrontal cortex.
Science, 291, pp312-316 (2001)



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