理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI) 理研BSIニュース No.12(2001年5月号)



脳の「匂い地図」

 機能分子研究チーム
 脳統合機能研究チーム
 匂いの感覚をもたらすものは、鼻のなかに吸い込まれる多種多様な匂い分子です。人間が感じる「匂い(の質)」が「匂い分子の構造」と深く関連するという考えは、古代ギリシャのルクレチウスの時代から推測されていましたし、近代の有機化学の進歩により「匂い分子の構造」が次々と明らかになるとますます確かなものとなりました。でも、どうして「匂い分子の構造」が私達が感じる「匂い」と結びつくのでしょうか?機能分子研究チームでは、ラットに様々な構造をした匂い分子を嗅がせたのち、脳内の嗅球から光学的測定法をもちいて「匂い分子応答」を記録することにより、嗅球の「匂い地図」を決定することに成功しました。嗅球の背側部の「匂い地図」をみると、共通 の官能基(発香団)をもち共通の「匂い(の質)」をもった匂い分子群にだけ応答する糸球群ドメインが2つ、それぞれ一定の位 置に配置されていました。さらに、匂い分子の他の構造的特徴(炭素鎖の長さや枝別れ;これらは匂いの質に微妙な影響をおよぼす)が、それぞれのドメイン内の糸球の空間的配置と対応していました。このようにして、見い出された脳内「匂い地図」は、人間が感じる「匂い」の分類と密接な関連があることがわかりました。


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光学的測定法により判明したラットの嗅球の匂い地図

Naoshige Uchida, Yuji K. Takahashi, Manabu Tanifuji, Kensaku Mori
Odor maps in the mammalian olfactory bulb: domain organization and odorant structural features Nature Neuroscience, Vol.3 No.10 October 2000




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