理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI) 理研BSIニュース No.18(2002年11月号)



田中啓治グループディレクターが
時実利彦記念賞を受賞
 去る7月8日、田中啓治認知脳科学研究グループディレクターは、東京ビッグサイトで開催された第25回日本神経科学学会において、平成14年度時実利彦記念賞を授与されました。これは、田中啓治グループディレクターの側頭連合野における物体視覚像の脳内表現の解明における顕著な研究が評価されたことによるものです。同賞は、脳研究に従事している優れた研究者を助成し、これを通じて医科学の振興発展と日本国民の健康の増進に寄与することを目的として平成11年度に設けられました。今年で4回目となります。
BSI サマープログラム2002の開催
 猛暑の中、サマープログラムが、7月から2ヶ月間開催されました。今年で4回目を迎えるサマープログラムには、インターンシップコースとレクチャーコースがあります。
 インターンシップコースは、参加者が約2ヶ月間BSIチームに滞在するもので、連日連夜、研究、技術取得に励み、コースの最後には、参加者全員による研究成果の発表がありました。
 また、レクチャーコースは、約2週間、国内外から著名な講師を招いて集中講義をおこないます。今年のテーマは、"Seeing the Brain in Action"。脳の活動の可視化をテーマに、様々な先端科学技術の極意に触れ、それらが我々の脳に対する理解をいかに深めてきたか、または深めていくのかを考える場を提供することを目的として開催されました。参加者からの多くの質問や、ポスターセッション、研究室訪問など、参加者と講師やBSI研究者との交流の促進が図られました。
 今年もサマープログラムが、世界各国の脳科学者のコラボレーションの機会を提供し、今後の世界の脳科学の発展の一翼を担う人材の育成を行うとともにBSI自身も向上するという形で脳科学の進展に貢献できればと思います。
 来年度のサマープログラムについては、"Nurturing the Brain"というテーマで現在企画中ですが、実地概要、募集要領等はBSIのホームページ(http:/www.summer.brain.riken.go.jp/)に掲載する予定ですのでぜひご覧になってください。
神経回路メカニズム研究グループ
研究レビュー委員会の開催
 7月30日〜8月1日の3日間にわたり、神経回路メカニズム研究グループ(伊藤正男グループディレクター、所属3チーム)の研究レビュー(評価)委員会が開催されました。委員会は、Prof. John H. Byrne(テキサスヒューストン大学医学部)を委員長とする9人の委員で構成され、グループ全体についての評価結果(概要)は以下のとおりでした。
 神経回路メカニズム研究グループは、神経回路と行動とのつながりについて研究している傑出したグループのひとつである。グループは、行動から分子レベルでの解析に至るまで学際的なアプローチをとっており、また最先端の技術を用いている。レビュー委員会は、神経回路メカニズム研究グループが次期5年間も継続されることを全面的に支持する。

・ システムレベル運動機能研究チームの設立:レビュー委員会はこの新しいチームの設立により、グループの全体的な強みが非常に強化されると確信する。レビュー委員会はまた、このチームの研究の焦点は、モデルシステムとして齧歯類を使って、システムレベルで運動調節に迫るべきであると考える。このように焦点をしぼることにより、グループは運動調節と運動学習の分野で世界の研究を先導する存在になるであろう。さらに、運動調節に焦点をしぼることは、BSI内の他のチームと同様、グループ内の他のチームとの協力的相互交流を促進するだろう。

・ 情動機構研究チーム:レビュー委員会は、情動に関わる脳機構の研究は、重要で時宜にかなったものと考える。しかしながら、BSIにおけるこの研究の将来について決断を下さなければならない。二木チームリーダー自身が提案したとおり、新たに霊長類で情動に関わる脳機能の研究が追究されるのであれば、ひとつの可能性として、現在ある田中啓治グループのようなシステムレベルの研究を行うチームに、この研究テーマを吸収させることが挙げられる。他の可能性として、齧歯類における情動に関わる脳機構を研究するための新しいチーム、または齧歯類における運動機能をシステムレベルで研究するための新しいチームを立ち上げることが考えられる。

・ 協力的相互交流の強化:レビュー委員会は、3つのチームのメンバー間で共同研究が驚くほど少ない点に気が付いた。3つのチーム間における相乗効果の可能性は大変に高い。レビュー委員会は、共同研究は強制できるものではないが、チーム間の協力的相互交流の潜在能力が全て発揮されるために、適切な取組みが開始されるべきであると確信する。レビュー委員会は、協力的相互交流を育むために次の取組みがなされることを特に推奨する。
1)運動機能をシステムレベルで解析する研究に焦点をあてるチームの設立。
2)グループが興味を持つ特別なトピックに関する、年1回のワークショップやミニシンポジウムの開催。
3)研究員の任期5年を定めた現行規則の緩和。
4)共同研究のための特別な予算の留保。

・海外の科学者の採用:グループ全体として日本国外の優れた科学者や技術者を魅了することに成功してきた。そうして、グループは国際的な神経科学界に開かれてきたが、個々のチームはこの点で努力の余地がある。この目的を達成するひとつの方法として、若い研究者を支援する一流のBSIフェローシップを設立することが挙げられる。
第5回BSACの開催

第5回 BSACの開催
 9月18日から20日の3日間、第5回脳科学総合研究センターアドバイザリー・カウンシル(BSAC)が開催されました。BSACはMichel Cuenod委員長(前国際HFSP推進機構事務総長)以下20名の内外のトップサイエンティストで構成され、BSIの運営状況などを調査し、助言や提言を行います。今回は、BSI設立から5年を経た第1期の評価を受けるとともに、大方の委員の任期が終了する節目のBSACでした。
 BSACの今回の報告書においては、設立後の5年間でBSIは国際的な認知を得るとともに、世界の最先端の脳研究機関の1つとなる可能性を示し、また日本において生物学に関する新しい、かつ刺激的な研究所のモデルを提供していると評価されています。また、1.先端技術開発グループが強力で重要な貢献をなしている、2.脳を創る領域について、各グループでコンピュータ神経科学、ロボット工学及び脳型コンピュータを研究するチームを統合するよう提言する。またグループディレクターとしてBSI中の実験系研究者と橋渡しできるような世界レベルのコンピュータ神経科学者の採用を検討すべきである、3.イメージングの研究について、fMRI、MEGの技術開発のみならずアプリケーションの開発についても力を注ぐ必要がある、4.RIKEN-MITとの連携研究が引き続き強化されることを期待する、5.BSIが生涯学習や教育関連の国のプロジェクトに神経科学分野での強みを活かして貢献するとのプランを支持する、ことなどが述べられています。
実験動物慰霊祭行われる

実験動物慰霊祭
 去る9月24日、今年で13回目の実験動物慰霊祭が行われました。脳科学総合研究センターをはじめ、和光本所の研究者は研究推進上必要なため、動物実験実施要領に基づいて行われた実験に供された動物の霊を慰めました。「動物慰霊碑」は脳科学総合研究センター西研究棟わきに建てられております。



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