理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI) 理研BSIニュース No.19(2003年2月号)



TOPICS
第5回RIKEN BSI RETREATの開催

第5回 RIKEN BSI RETREATの開催
 昨年10月22日〜24日の3日間、森林公園ホテルヘリテイジで、RIKEN BSIリトリートが開催されました。
 リトリートでは、お互いが行っている研究について、日頃の研究室の枠を取り払い、隣の研究室、異なった分野の研究者同士が打ち解けた議論や、建設的な批判をし合う絶好の機会が提供されます。今回で5回目を迎えたリトリートには、RIKEN-MITセンターからの参加者を含む約350名の研究者が参加し、約300のポスター発表が行われました。期間中は熱心な質疑応答が繰り広げられました。研究分野を超えて、活発な議論が展開され、お互いの研究に刺激を与えました。
 今後も分野を超えて相互理解を深め、知的交流を促進することでBSIの特徴を生かした、脳科学の総合的な研究の発展に貢献し、多くの成果を生み出せるようにしていきたいと考えております。
第4回日韓中印国際シンポジウム(NBNI)
 アジアは停滞する世界の中で、急激に発展している。21世紀は科学でも経済でもこの地域の寄与が大きくなることが予想される。日本はこの発展を助けその中心になって活躍することが期待されている。
 さて、われわれが研究している脳は生物の情報を扱う器官であるから、脳の仕組みを明らかにするためには生物科学と情報科学の双方に基礎を置く広い視野が必要になる。BSIでは、異なる方法の融合のもとに新しい脳科学を発展させる努力が続けられている。
 こうした経験を活かし、アジアでの活躍の中核になることを目指して、4年前にBSIはKAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)を本拠とする韓国の脳科学のプログラムと協力関係を結ぶことに合意し、その一環として日韓の 'Joint Workshop on Neurobiology and Neuroinformatics'(NBNI)を開催することにした。これは、脳を知る、守る、創るの三領域が学際的に協力する、きわめてユニークな試みである。
 第1回をNBNIを理研で開催し、次は韓国慶州で、さらに第3回は中国を加えて中国杭州で開催した。今回の第4回はこれにインドが加わり、アジアにおける主要な国がそろって、これからの脳科学の展開のために協力を開始した。会議は去る11月25、26日の両日に、理研で行われた。
 各国から選ばれたほぼ十名ずつの先端的な研究者の講演発表とそれに続く活発な討論があり、さらにBSIの見学や個人的な交流も行われ、大きな成果を収めた。この4年間のアジア各国の学術レベルの発展には目を見張るものがあり、この中で理研BSIが果たしている役割は大きい。NBNIは次回は韓国で、次々回はインドで開催される。
病因遺伝子研究グループ主催による
第1回国際ワークショップの開催

第1回 国際ワークショップの開催
  去る11月27日から29日鈴木梅太郎ホールにおいて病因遺伝子研究グループ主催の第1回国際ワークショップが開催されました。グループ発足5周年を記念し、また第2期にむけて国際的な交流を強化するために本年5月頃から準備したもので、短い準備期間ではありましたが、グループの研究領域:ポリグルタミン病やパーキンソン病のような蛋白質のミスフォールディングが病態に深く関与している領域とてんかん研究を中心に海外から13名、国内から6名の招待講演者を招くことができました。各チームリーダーが当該領域の主要な研究者を招待したため、異なる領域の最前線をこのワークショップで知ることができ、また活発の討論がなされたため、演者、聴衆からも大変好評でした。ミスフォールディング病の領域では病態の解明が多方面から進められ、すでに治療が主要な課題となってきていることが印象的であり、一方てんかんはその関連遺伝子の解明によって、病因遺伝子に応じた治療の開発など今後の急速な進歩が期待されました。今回のワークショップの開催はすべてグループで準備したため、不慣れな点が多々あり、理研内外への案内も不十分な点がありましたが、この経験を元に今後2年に一度程度開催することにより、当該領域の国際交流に寄与したいと考えています。
市民公開講座「脳と教育」の開催

市民公開講座「脳と教育」の開催
 去る12月9日(月)に横浜ランドマークホールに於いて、脳科学の知識を生かして、育児・教育現場の問題を解決し、子供の才能を健やかに伸ばす可能性を、脳の研究者と教育者との対話を通じて探ることを目的として、市民公開講座「脳と教育」〜未来社会への鍵〜を開催いたしました。
 この公開講座では、小泉英明、日立製作所基礎研究所・中央研究所主管研究長及び本田和子、お茶の水女子大学学長による講演に引き続き、伊藤正男、理化学研究所脳科学総合研究センター所長の司会により、5人のパネリストを加えたメンバーでパネルディスカッションをおこないました。
 当日は、雪にもかかわらず約250名の方が参加し、“脳の臨界期”や“ゲームが脳に与える影響”等多数の質問があり、この分野に対する関心や期待の高さをあらわしていました。
“脳の発達と生涯にわたる学習”に関する
ネットワーク(LLLN)会議の開催

“脳の発達と生涯にわたる学習”に関するネットワーク(LLLN)会議の開催
 去る12月10、11日、横浜市のランドマークタワー1に世界中から教育政策関係者や神経科学者らが集まり、“脳の発達と生涯にわたる学習”に関するネットワーク(LLLN)会議を開催しました。このネットワークの目的は、個人の生涯にわたる教育を向上させる方法を見出すことにあります。ネットワークは1999年にOECDのイニシアティブで開始された“学習科学と脳研究”プロジェクトの一環であり、3年間にわたって行われた脳研究者と教育政策関係者との意志疎通と連携をいかに促すかについての討論を引き継ぐものです。この3年間の討論において脳研究と学習の問題をめぐる目標と共通の対象が設定されたことから、「読み書き能力」、「数学的思考」、「生涯にわたる学習」の3つのネットワークが設立されました。
 ネットワーク会議では、BSIのヘンシュ貴雄博士をはじめとする神経科学者から、脳の学習機能の理解に貢献する最新の研究結果が報告されました。講演は、幼児期における学習、少年期における学習、生涯にわたる学習の3つのテーマに分かれて行われました。各セッション後、ネットワークのメンバーによって活発な議論が行われ、これらの研究結果が教育の方向を形づくるのに役立つかどうか、その貢献の可能性について話し合われました。
 LLLNは、教育専門家が生涯にわたる教育のニーズの変化に対応することに、脳科学がどのように役立つかを考えています。ネットワークは、基礎神経科学に基づいた学習への応用を促進し、新たな学習科学の基礎を築くため、教育と脳研究のギャップを埋めることを目指しています。
 「読み書き能力」と「数学的思考」のネットワークと共に、「生涯にわたる学習」ネットワークは、新たな脳の理解が、新しい課題に取り組む能力と意欲を持つ人を育成するカリキュラムの作成や、教育課程を策定する際に持ち上がる重大な問題への答えを見いだすための直接的な研究に、どのように役立つかを見極めたいと考えています。
 BSIとOECDが共催する会議は、2003年12月に再び開催されます。

1ランドマークタワーは、横浜を一望できる日本で最も高いビルであり、晴れた日には富士山も眺めることができます。

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