理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI)Brain Science Institute



新たに4研究チームが発足

 BSIではこの1月に先端技術開発センター(ATDC)に2チーム、そして2月に発生・分化研究グループに2チー ムが新たに設けられました。

 ATDCの技術開発には大きく分けて、計測法技術開発と生物的技術開発の2分野があります。今回新設された細胞機能探索技術開発チーム(宮脇敦史チームリーダー)は、独自に開発したCameleonというカルシウム指示薬を用いて、カルシウムイメージングに飛躍的進歩をもたらすと共に、GFPの物理化学的特性を駆使して、細胞諸機能に活躍する分子の動態を時空間的に把握することを目指します。

 細胞培養技術開発チーム(小川正晴チームリーダー)は大脳、海馬、小脳などの皮質層構造を決定する遺伝子産物の同定と機能解析、皮質層の形成に関与する細胞間相互作用や遺伝子発現調節を研究するため、組織培養法やミュータント動物の開発を進めていきます。

 また、発生・分化研究グループに新設された神経再生研究チーム(梶原一人チームリーダー)は、障害を受けた神経細胞の機能修復のため、成体体細胞から神経幹細胞を取り出すという独自のアプローチを用います。そのモデルとして、アカハライモリの網膜再生の分子メカニズムを理解することにより、最終的には神経細胞移植法の新しい可能性を模索します。

 分子神経形成研究チーム(古市貞一チームリーダー)は、神経回路網形成過程で起こる神経細胞の増殖、分化、認識、成熟、シナプス形成、細胞死等の一連のイベントに関与する分子・細胞機構の解明を目指します。そのモデルとしてマウス小脳神経回路を用い、それに関わる神経形成遺伝子群を時空間的に体系化することを目標にします。

進む外部との連携研究

 BSIでは、センターで行う独自の研究に加えて、外部研究機関との連携協力を強力に推進しています。連携研究は、センター単独で実施するより、連携により目標達成に向けた相乗効果が期待できるもの、センター単独では実施困難な研究や特別な機器が必要な研究を対象に選定しています。

 現在実施している連携研究は、最も効率的に成果が得られる研究テーマ(目標)についてBSIの1つの研究チームと外部の1つの研究機関との共同研究が中心となっています。将来的には、人材雇用や研究設備等の配備を行う幅広い連携や、理研と相手方の双方の優れた指導的研究者を中心とした共同プロジェクトを編成することも計画しています。

 現在BSIと連携している研究機関、企業は以下の通りです。

〈脳を知る領域〉

    大分医科大学
    北海道大学大学院薬学研究科
    新潟大学脳研究所
    岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所
    秋田県立脳血管研究センター

〈脳を守る領域〉
    東京都精神医学総合研究所
〈脳を創る領域〉
    工業技術院電子技術総合研究所
    (株)本田技術研究所
    富士ゼロックス(株)
イカの長期飼育システムの稼働

 このほど、BSIにイカの長期飼育システム水槽が設置されました。  ヤリイカの長期飼育は水棲動物の中では最も困難とされていますが、この水槽は脳型デバイスブレインウェイ研究グループの松本グループディレクター、市川チームリーダーの20数年の飼育経験のノウハウを集約的に結晶させ独自に開発されたものです。

 「脳を創る」ためには、脳を構成する素子としての神経細胞の機能原理を解明することが必要です。 ヤリイカは巨大な神経細胞を持っているので、この研究には極めて適していると考えられます。


 イカ長期飼育システム水槽
今回設置された水槽は、主に20トンの円形大水槽、1.5トンの小水槽、マルチ・ハイデンス飼育装置3基です。特徴として、要所に設置された紫外線殺菌装置、海藻を入れた水質を安定させるための緩衝用の水槽の設置、水槽に対するフィルター槽の比率、水流の流速を適宜変更できることなどが挙げられます。


平成11年度予算が決まる

 科学技術基本法及び科学技術基本計画に基づき、我が国の科学技術関係予算は増額基調にあります。その流れの中で、BSIの平成11年度予算も平成10年度の88億円(当初認可予算)から112億円へ増額されました。

 平成11年度予算では、「脳を知る」及び「脳を守る」領域の拡大に加えて、科学技術庁の重要施策である「生命・情報融合(注)」研究計画の一環として、脳の情報処理の人工的実現を目指す「脳を創る」領域研究に予算が重点的に計上されました。

 その主な内訳は、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)との連携研究の本格化を含む「脳を知る」領域研究に24億円、老化にかかわる研究などに加え、損傷した神経細胞の修復に関する研究を開始する「脳を守る」領域研究に16億円、施設建設・維持管理に33億円などとなっています。

(注)生命機能と情報処理技術を融合させることにより、ライスサイエンス分野と情報科学技術分野双方の発展・高度化を目指すための施策


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