理研BSIニュース No.36(2007年6月号)

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トピックス


認知脳科学研究グループの研究レビュー委員会の開催

認知脳科学研究グループ(田中啓治グループディレクター、所属4チーム)の研究レビュー(評価)委員会が、2006年11月13日~15日の3日間、開催されました。委員会は、Prof. Michael P. Stryker(カリフォルニア大学医科大学院)を委員長とする9人の委員で構成されています。グループ全体についての評価結果(概要)は以下のとおりでした。


認知脳科学研究グループは、視覚的物体認識と目的指向的行動の問題に焦点を当てて、ヒトおよびヒト以外の霊長類動物モデルで実験を行っている2つの研究チーム(認知機能表現研究チーム脳統合機能研究チーム)、脳磁計を使ってヒトの脳機能を調べている脳機能ダイナミクス研究チーム、大脳の高次領野の解剖学的構造を一部機能との関連で研究している脳皮質機能構造研究チームから構成される。さらに、ヒトのfMRI研究を推進するためのfMRI測定支援ユニットがある。


本グループは、高次大脳機能を研究する世界を代表するグループの一つである。世界中のどの大学でも物体認識の問題に言及する講義は、神経科学、心理学、コンピューター科学のいずれの分野であっても、このグループの研究成果を必ず紹介する。生産的であるばかりでなく、概念的かつ技術的に驚くほどの創造性に満ち溢れた測定手法と解析手法での研究が、いつくかの研究チームで行われている。


本グループを形成するにあたっては、異なった実験技法を持った研究チームを集め、共同研究によりいくつかの問題をより深く追求することが期待された。下側頭葉皮質での物体認識の研究やfMRI研究などにおいて良い相乗効果が発揮された。しかし、一方で、fMRIと脳磁計の共同研究の成果はまだ限定的であり、また下側頭葉皮質における機能的構造と解剖学的結合との関連性ももっと深められる可能性があった。2006年10月に「fMRI支援ユニット」をスタートさせたのは適切な判断であった。これはBSIにおける学際的な共同研究を強化しつつある。



IBRO APRC/RIKEN BSI Advanced Schoolの開催

2007年2月26日から3月9日にわたり、「IBRO APRC/RIKEN BSI Advanced School」が開催されました。


IBRO APRC(International Brain Research Organization, Asia Pacific Region Committee)では、今回、アジア・パシフィックにおける研究や成果が優秀なポスドクや若手研究者を対象に、さらに進んだ知的体験の場や研究活動の場を提供することを目的として、初めてAdvanced Schoolを開催することとし、1回目は理研BSIで行いました。11名の参加者は、期間中、BSIのチームリーダー、ユニットリーダーおよび Esther Stoeckli博士(Institute of Zoology, University of Zurich, Switzerland)による午前9時からの1時間の講義を受けたほか、講義後各研究室内でBSIの特徴を活かした実地体験(hands-on experience)を含む実習を行いました。



世界脳週間2007の開催

脳科学の意義と社会的な重要性を知ってもらうための世界的キャンペーンである「世界脳週間2007」が、2007年3月12日から18日を中心に全国各地で開催されました。BSIでは3月17日、「脳の不思議に迫る」をテーマに、高校生や高校の先生方を主な対象として、講演と研究室の見学会を実施しました。イベントは伊藤正男BSI特別顧問の開会の挨拶に始まり、谷藤学チームリーダーによる「ものを見る脳のしくみ」、および津本忠治ユニットリーダーによる「脳の発達と育ちの影響」と題した講演がなされました。その後、8つの研究室(1人2研究室ずつ)を見学しました。講演、施設見学の後は活発な質疑応答が時間いっぱい交わされ、100人を超える参加者に脳科学を理解していただく貴重な機会となりました。



RIKEN BSI-オックスフォード合同国際シンポジウムの開催

4月14~17日、理研神戸研究所において日本と英国を含む9カ国からの研究者が、複数の言語にわたる読書障害の最新情報に関するシンポジウムを行いました。BSIおよびオックスフォード大学の共同開催によるこの2度目のシンポジウムでは、25の講演と3つのポスターセッションが行われました。


BSIの馬塚れい子チームリーダーは、日本語において漢字を読む時には、言葉を発音するために必要とされるモーラの数や他の音声特性が影響することを示しました。また、岡ノ谷一夫チームリーダーは、視覚と音声を用いた刺激分節化のデータを紹介し、両者に共通するメカニズムがあることを示唆しました。最後に、Cees van Leuweenチームリーダーが、知覚による認知研究の手法を読書の成功に導く新たな仮説として紹介しました。これらの専門が異なる研究者による展望は、参加者の興味を喚起するとともに、失読症の原因とメカニズムに関する討論の火付け役を果たしました。



理研一般公開

2007年4月21日、理研和光研究所では一般公開を行いました。BSIでは脳科学中央研究棟などにおいて、家族連れや小中学生がたくさんの体験コーナーに参加し、また研究者との間では熱心な質疑応答がなされ、市民の方が脳科学に触れる有意義な一日となりました。(表紙写真参照



BSI創立10周年記念事業の開催

脳科学総合研究センターは、創立10周年の記念事業を来る2007年6月から10月にかけて行います。詳しくは公式ホームページをご覧ください。

公式HP<http://www.noukagaku10.jp>
(※ホームページの公開は終了いたしました)


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