BSI NEWSではこれまで、チームリーダーやユニットリーダーなど、ラボを率いるリーダーたちに話を聞き、その素顔を紹介してきた。
しかし、ラボを成り立たせているのはリーダーだけではない。研究員はもちろんのこと、縁の下で研究を支えるテクニカルスタッフやアシスタントの存在がある。が、彼らが実際にラボでどのような仕事をしているのかは、あまり目にする機会がないかもしれない。
脳回路機能理論研究チーム（深井朋樹チームリーダー）のテクニカルアシスタント、武内由夏さんもその一人。長年勤めた民間企業から転じ、初めて研究所に来た彼女の目には、理研やラボの様子、チームリーダーの存在はどのように映るのだろうか──。
Q：いつからBSIに来たのですか？
A：2007年7月です。大学を卒業して以来、都内のシステム開発の会社で、金融機関向けのシステム設計の仕事をしていましたが、2年ほど前、一区切りつけようかなという気持ちになって退職しました。埼玉県内に住んでいますので、県内でどこか働けるところはないかなと思っていたとき、BSIのホームページに掲載されていた募集を見て応募しました。
Q：理研にはもともと興味があったのですか？
A：和光に理研という大きな研究所があることだけは知っていましたが、具体的にどんなセンターがあって、どんなことをしているのかは、ほとんど知りませんでした。
理研を訪れたのは、2007年4月の一般公開が初めてです。そのときは、たまたま新聞の埼玉版で開催日前日に予告記事を見て、「桜の花もきれいに咲いている時期かな」と思って家族で出かけました。
出かける前にホームページで催しを一通り把握してから行こうとしたのですが、いろいろなイベントがたくさん用意されていて、「これは一日では見きれないな」と思っていましたが、やはりその通りで、一般公開が一日だけというのはとてももったいないという気がして、後ろ髪引かれる思いで帰りました。
Q：ラボではどんな仕事をしていますか？前職のスキルは活かされていますか？
A：週3日勤務で、仕事の内容は7割が実験データの整理のお手伝いで、研究員の指示に従ってパソコンでデータの判別・整理作業をしています。そして、3割が事務作業です。
以前、コンピュータ関連の仕事をしていましたが、金融機関向けのプログラムは事務計算の分野で、ラボで行っている科学技術計算とは異なります。実は、深井先生の出していた募集条件は、たしか「地道な作業に向いている人」「根気のある人」とそれだけで（笑）。
Q：でも、その点では自信があるようですね？
A：そうかもしれませんね。システムを組むときには、まず「いつまでに、何を、この予算で」作らなければならないという外枠が決められ、どのように進めていけばそれを実現できるのかということを、どんどんブレイクダウンしていきます。そういった作業の進め方は、ラボでの仕事にも役立てられるものと思っています。
Q：ラボの様子はいかがですか？
A：ラボのメンバーは滞在者や他チームから共同研究に来ている人も含めると16名です。チームリーダーの深井先生を始め、研究員やその他のスタッフの方々が皆さんフレンドリーなのが第一印象で、私が早く馴染めるように心遣いをしてくださって、本当に明るくて開放的でいいラボだなという印象を持ちました。
企業と研究所とでは、やはり空気が違うところがあるとも感じました。私はまだ直接、ピリピリした場面に立ち会ったことはありませんが、研究員の皆さんは、お一人お一人相当なプレッシャーを感じながら、日々研究を積み重ねているに違いないと思います。
Q：武内さんから見た深井チームリーダーはどんな方ですか？
A：ご自身の研究の他に、日中は研究員と議論したり、ラボを訪問される方々との時間をつくったりと、人のために割かれている時間が多くて、本当にタフだなあと思います。私にも、いつも「どうですか」と声をかけてくださっています。本当に話題が豊富な先生で話が尽きません。
Q：BSIはどんなところだと感じましたか？
A：脳科学はこれから高齢化が進む日本にとって大事な研究で、いろいろな分野からたくさんの人が集まってこういう大きなセンターになり、世界と競争しながら研究をしている最先端なところだと感じています。
私自身としては、データを扱うときには細心の注意を払って、少しでも研究に貢献したいと思っています。それに、せっかく楽しいラボでお手伝いさせていただくことになったので、自分でも楽しみながらお役に立てるように続けていきたいなと思っています。
