理研BSIニュース No.38(2008年1月号)

言語切替:日本語 » English

トピックス


神経回路メカニズム研究グループの研究レビュー委員会の開催

神経回路メカニズム研究グループ(伊藤正男グループディレクター、所属4チーム、6ユニット)の研究レビュー(評価)委員会が、2007年5月9日~11日の3日間、開催されました。委員会は John H. Byrne委員長(Professor, The University of Texas Medical School at Houston, USA)を始めとする12人で構成されました。グループ全体についての評価結果(概要)は以下のとおりでした。

神経回路メカニズム研究グループは、神経回路が行動を発生させるしくみと、神経回路が行動の変容を支えるように変化するしくみを解明する研究を行うために発足した屈指のグループである。このグループは、分子レベルから行動レベルに至る課題に学際的に取り組み、電位感受性分子プローブを用いた神経活動イメージングや、遺伝子組み換えマウスを使用した最先端の技術を駆使して、神経回路機能における特異的遺伝子と蛋白質の役割の検証実験など重要な研究課題について多彩な成果をあげた。今後ともその活動が継続されることを期待する。ニューロンとグリアの相互作用に関する3つの研究ユニットが集まったことは意義深く、今後の活動の発展に期待する。グループのあり方について、委員会は若手の研究者に対する新しいメンタリング制度をつくり、ポスドクから自律した研究者への移行期にある若手の研究計画や発表についての指導を強化することを勧告する。今後、グループディレクターをはじめ一部のチーム及びユニットのリーダーの交代が予定されるが、そのあとには特に優秀な研究者が国際的に選ばれ、グループがよりよい形に再編されることを期待する。



先端技術開発グループの研究レビュー委員会の開催

先端技術開発グループ(宮脇敦史グループディレクター、所属5チーム)の研究レビュー(評価)委員会が、2007年6月25日~27日の3日間、開催されました。委員会は、Prof. George J. Augustine(Duke University Medical Center)を委員長とする11人の委員で構成されました。グループ全体についての評価結果(概要)は以下のとおりでした。

研究レビュー委員会は先端技術開発グループのコンセプトに感銘を受けた。このグループはBSI、そして神経科学分野の貴重な財産である。新技術の開発、そしてその新技術を脳科学の重要な問題に応用することのいずれにも挑戦していることを理解している。このグループのメンバーの活動は、これらの課題に適切に対応している。宮脇グループディレクターを筆頭に、このグループの成し遂げた成果は、世界に誇るべきものである。



神経分化修復機構研究グループ及び発生発達研究グループの研究レビュー委員会の開催

神経分化修復機構研究グループ(岡本仁グループディレクター、3チーム)及び発生発達研究グループ(御子柴克彦グループディレクター、3チーム、2ユニット)の研究レビュー(評価)委員会が、 2007年7月18日~20日の3日間、開催されました。委員会は、Prof. Lynn T. Landmesser(Case Western Reserve University, School of Medicine)を委員長とする12人の委員で構成されました。グループ全体についての評価結果(概要)は以下のとおりでした。


神経分化修復機構研究グループ

次の5年間、BSIがこのグループを支援することを強く提言する。このグループは現代神経科学の重要分野に取り組み、 BSI内外の科学者に重要な知的で技術的な専門知識を提供し、2人の大変将来有望な若手チームリーダーの育成に成功した。これらのことは日本の神経科学の未来をより高みに導くだろう。

委員会は岡本グループディレクターのリーダーシップとメンタリング能力に非常に感動した。岡本グループディレクターは、このグループの各チームリーダーと頻繁かつ生産的に交流を行い、彼らの独立を奨励し推進してきた。また、各チームの研究スタッフ全員が参加する定例会議を開催している。こうした会合から多くの連携交流が生まれ、このグループの学生、博士研究員、その他の研究スタッフに知的資源を提供してきたことは明らかである。


発生発達研究グループ

このグループは傑出している。エキサイティングで生産性も極めて高いこのグループをBSIが今後も支援し続けることを強く提言する。このグループでは、神経科学の重要分野に焦点を合わせ、生物学的な複雑度が異なる脳の発達の多くの側面を研究し、ヒトの脳疾患に関係するいくつかの動物モデルをもとに高次脳機能の研究が行われている。何よりも重要なことは、このグループには、バイオインフォマティクス、動物モデルのみならず、遺伝学、細胞生理学、生物物理学、分子生物学などのさまざまな神経科学分野の専門知識が揃っているということである。そして、その対象は行動学の研究にまで広がっている。

御子柴グループディレクターは模範的な指導力を発揮し、若手科学者のメンタリング、そしてBSI内外のさまざまな研究チームとの共同研究を推進する素晴らしい環境を整えている。



RIKEN BSIサマープログラム2007の開催

2007年7月初旬から約2カ月にわたり、『RIKEN BSIサマープログラム2007』が開催されました。サマープログラムはレクチャーコースとインターンシップコースで構成され、9回目となる今回は世界 20カ国から53名の若手研究者が参加しました。また、ハーバード大学の学部学生4名が、両機関の協定に基づきインターンシップ(6月10日~8月19 日)を経験しました。

今回のレクチャーコースは、BSI設立10周年を記念し、全体のテーマを“Brain Science: Mystery and Mission”と名付け、従来のように重点研究領域にテーマをおいて講師を選定する方法ではなく、脳研究の全領域を俯瞰し、BSIの学際性を強調しようという方針を立てました。Mysteryという言葉には脳科学、そしてBSIにおける研究が「この10年で多くの未知の分野を解明してきた」という自負が込められており、さらにこれからも解明していく、という科学者としての使命を全うする意気込みがMissionという言葉で表現されています。

レクチャーコース期間中は、ポスターセッションや研究室訪問などにより参加者とBSIのメンバーとの研究交流が促進されました。また、7月31日にマレーシアの元首相であり、医学博士であるマハティール・ビン・モハマド博士が理研栄誉フェローの称号を授与された折に行われた懇親会にサマープログラムの学生が招待され、博士や同夫人と意見交換が行われました。参加した学生にとっては稀有の機会となり、思い出に残る体験となりました。

インターンシップコースの参加者は約2カ月間、BSIのホスト研究室で実際に研究を行い、コースの最後にはBSI滞在中に行った研究成果の口頭及びポスターでの発表をしました。BSIでは今後も引き続きサマープログラムを開催し、参加者にBSIの研究者や世界各国の研究者との交流の機会を提供することによって、世界の脳科学の発展を担う研究者を育成するとともに、BSIの質的向上を図ることを通して世界の脳科学に貢献していきたいと思います。

来年度のサマープログラムは、“Developmental Foundations of Brain Function and Dysfunction”というテーマで企画中です。講師陣、実施概要、募集要領等はRIKEN BSIのホームページ(http://www.brain.riken.jp/summer.html)をご覧ください。



理研BSIニュース No. 38 (2008年1月号)の記事



発行元

  • 理化学研究所
    脳科学総合研究センター
    脳科学研究推進部
  • 〒351-0198
    埼玉県和光市広沢2番1号
    TEL:048-462-1111(代表)
    FAX:048-462-4914
    Email: bsi@riken.jp
  • 掲載の記事・写真及び画像等の無断転載を禁じます。
    すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。