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脳統合機能研究チーム

Optogenetics-光イメージング法による領野間の機能的マッピング法の開発

「Optogenetics-光イメージング法による領野間の機能的マッピング法の開発」 私たちの日常的な営みは、難しく言えば、外界の事物を認識し、判断して、行動を計画し、実行することである。システム脳科学の中心的な課題は、この一連の過程の各ステップに対応して、脳のどこがどのように活動するかを解明することにある。たとえば、私たちは視野のかなり広い範囲にある物体を認識することができる。脳の高次視覚野の活動をみると、かなり広い視野にある物体に反応する細胞があるので、視野の位置に依らない物体の認識はこのような細胞の働きによって成立していると説明できる。しかし、この説明だけでは今一つわかった気がしない。
認識や行動に対応した神経活動の発見は、個体レベルで脳を理解する第一歩でしかない。どのような神経回路の働きによって、その細胞に特有な反応が形作られるのかを解明しなければならないのである。視野の位置に依らない反応性を持つ細胞の話に戻せば、視覚入力を最初に受ける眼(網膜)には広い視野に対する反応はないから、網膜から高次視覚野に至る特別な神経回路によってそれが実現されているのであろう。しかし、残念ながら、その神経回路の実体についてはわかっていない。視野の位置に依らない反応性を持つ細胞の話ばかりでなく、認識や行動に対応する神経活動について数多くの発見が近年なされたが、その反応性を形作る神経回路については、まだ、ほとんどわかっていないのが実情である。本課題の目標は、個体レベルで観測される神経細胞の反応性がどのような神経回路で実現されているのかを解明する強力な手段を開発することにある。



反応性を形作る神経回路の解明を難しくしているのは、100億個もある脳の細胞の中でつながっている細胞あるいは細胞群のペアを同定することが難しいことにある。私たちは、オプトジェネティクスという分子生物学の技術と神経活動の光イメージングという工学の技術を組み合わせることでこれを実現する。オプトジェネティクスは、光を神経活動に変換するタンパク質(チャネルロドプシン)を細胞に発現させる技術である。光イメージング技術は、神経細胞の活動に伴って起こる蛍光、吸収、散乱などの光学的な信号を捉える神経活動の可視化技術である。光を使ってチャネルロドプシンを発現した神経細胞(ないしは神経細胞群)を活動させたとき、その入力を受けて活動する細胞や細胞群を可視化すれば、つながっているペアをマップできるはずだ。しかし、特定の細胞に光感受性のタンパク質を発現させるためには様々な工夫が必要になる。一方、神経活動に伴って起こる光学的な信号は微弱なので、その検出には工学的な工夫が必要になる。両者の持つ問題点を解決し、特有な神経活動が、どのような入力を、どこから受けたことで引き起こされたのかを解明することでひとつ高いレベルのシステム脳科学研究を可能にします。

  • 谷藤 学【チームリーダー】
  • 橋本 光広
  • 佐藤 多加之
  • 北村 尚士
  • 中道 友
  • 萩谷 桂