理研BSIニュース No.28(2005年5月号)

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トピックス


脳を創る領域国際ワークショップおよびレビュー委員会の開催

脳を創る領域国際ワークショップおよびレビュー委員会の開催

脳を創る領域の研究レビュー(評価)委員会が昨年9月29日~10月1日の3日間、開催されました。委員会は、Prof. Michael Arbib (南カリフォルニア大学)を委員長とする15人の委員で構成されています。レビュー委員会に先立って開催されたワークショップでは、脳を創る領域の将来の方向性などについての有益な議論が行われました。レビュー委員会は10年を経過した3チーム、5年を経過した4チームを含む、脳を創る領域全体の活動およびその再編について検討し、報告書を提出しました。領域全体に対する評価結果(概要)は以下のとおりです。


脳を創る領域は、計算論的神経科学と脳型計算学を両輪とし、この双方の接点に位置する数理神経科学、これらを技術的に援助するニューロインフォマティクスからなるもので、BSIが世界に先駆けてこの領域を設定し、先頭に立って牽引していることは高く評価できる。また、いくつかの研究チームは世界の頂点に君臨している。


一方、脳を創る領域が当初に掲げた「脳型の知能機能の開発」という目標はいまだに困難でこれまでの活動は十分とはいえず、初期の目標が達成されたとはいいがたい。その要因として、1.いくつかの研究チームの実験への過度の傾斜、2.脳を創る領域の目標に関する共通の理解の欠如、チーム間の協調の不足、およびこれを改善するための強力な指導力と統治の不足、3.産業界との連携の不足、の3点を挙げている。


今後の方針として、現存のチームを母体とする脳を創る領域の再編を支持するとともに、そのさらなる発展のための方策として、以下の提言をしている。

  1. 学問的に優れ、神経科学とその理論およびロボット学などに通じ、国際的に著名で指導力が高く、かつ産業界との連携が可能な新しい領域ディレクターを登用する。
  2. 脳を創る領域の共通の目標を明確にし、研究チーム相互の連携と協力関係を強化する。脳型コンピューティング技術の開発にも目を配るとともに、トップダウンの指導力を強化する。
  3. 国際競争力のある若手研究者の育成につとめるとともに、予算配分方式を柔軟にし、チームの新設だけでなく、若い優秀な研究者によるユニットの設置に配慮する。また、ローリングテニュア制度の導入を検討する。
  4. 大学との連携を強化し、大学院生およびポスドクの研修制度の充実をはかる。

これを受けて、創る領域では全体を「計算論的神経科学研究グループ」、「脳型計算論グループ」の二つに再編するとともに、現在いくつかのチームおよびユニットを公募して、研究をさらに活性化して世界における指導的地位を築いていくつもりでいます。




世界脳週間2005の開催

去る2005年3月12日、世界的な規模で行われている脳科学の啓蒙キャンペーン、「世界脳週間2005」の一環として、BSIでは「道具・言語を獲得する脳のメカニズム」をサブテーマに、脳科学中央研究棟において、高校生や高等学校の先生方を主な対象として、講演と研究室の見学会を実施しました。イベントは甘利俊一センター長の挨拶に始まり、入來篤史チームリーダーによる「『心の内』を計測する」、および馬塚れい子チームリーダーによる「言葉という窓からヒトの心を探る」と題した講演がなされました。その後、5つの研究室を見学しました。講演、施設見学の後は活発な質疑応答が交わされ、脳科学を理解していただく貴重な機会となりました。




理研一般公開の開催

恒例の科学技術週間行事が去る2005年4月18日から24日まで、“はじまりはいつもひとつの「なぜだろう」”をテーマに全国各地で開催されました。その一環として、理化学研究所和光研究所では2005年4月23日に一般公開を行いました。当日は好天に恵まれ、7,000名の来訪者でにぎわいました。BSIでは20を超えるコーナーを設置し、家族連れや小・中学生はロボット作りなどの数々の体験コーナーに参加し、また研究者の工夫を凝らした展示物に触れて熱心に説明を聞く光景があちらこちらで見受けられました。また、鈴木梅太郎記念ホールでは、神経回路発達研究チームのヘンシュ貴雄チームリーダーによる、“脳の発達「臨界期」”と題する講演も行われ、脳の神経回路網の柔軟性(可塑性)のメカニズムを解明する研究が紹介されました。当日は研究者と一般市民とが交流する有意義な一日となりました。




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