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認知機能表現チーム

ウィルスベクターの2重感染によるマカク属サル脳部位間の相互作用の解析

 ヒトを含む霊長類における高次脳機能は、高度に発達した大脳皮質によって制御されると考えられています。霊長類の中でも特にマカク属サルにおいて、大脳皮質内の領野の同定、領野間の解剖学的結合および各領野の機能が盛んに研究され明らかにされてきました。一方、霊長類では遺伝子改変動物の系の確立が極めて困難であることから、これらの脳機能の回路レベルでの理解は進んでいません。近年、ウィルスベクターの脳への注入による遺伝子導入の技術が開発され始めており、霊長類への応用が期待されています。
 私達はこれまで、破壊行動観察法および神経細胞活動記録法を用いてマカク属サルの視覚連合野および前頭連合野の中の領野ごとの機能の違いを明らかにし、大脳連合野の機能研究において世界をリードしてきました(Fujita et al., Nature, 1992; Tanaka, Science, 1993; Wang et al., Science, 1996; Matsumoto and Tanaka, Science, 2003; Mansouri et al., Science, 2007; Buckley et al., Science, 2009など)。

しかし、機能はひとつの脳部位の中の情報処理だけで生じることはまれであり、複数の部位間の相互作用の中で現れることが多いと考えられています。研究の更なる進展のためには、部位間の相互作用を選択的に操作する方法が必要です。しかし、部位間の相互作用を調べる方法は極めて限られています。私達は、ウィルスベクターの共感染によって、特定の部位から特定の部位への投射の働きをブロックする方法を開発します。そしてこの方法を使って、視覚連合野の諸領域間の相互作用、前頭連合野の諸領域間の相互作用、視覚連合野と前頭連合野の相互作用の働きを研究します。

  • 田中 啓治【チームリーダー】
  • 肥後 剛康
  • Majid Mahboubi
  • 一戸 紀孝(国立精神・神経センター神経研究所)