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FAQ

「直観」と「直感」はどうちがうのですか?
「ちょっかん」の漢字は2つあり、辞書(大辞林)によると
直観:推理を用いず、直接に対象を捉えること。(英語のintuition に相当)
直感:推理・考察などによらず、感覚的に物事を瞬時に感じとること。(英語のinspirationに相当)
将棋で「ちょっかん」という言葉が使われる場合、この両者の双方で用いられていると考えられる。本プロジェクトでは、研究を進めていく過程において、「感覚的に物事を瞬時に感じとる」という「直感」ではなく、熟練した頭脳の持ち主が「直接に対象を捉える」という観点から「直観」のほうを主な研究対象として選んでいます。しかし、「直観」と「直感」は重なり合う部分もあるため、今後の研究の進捗を見て考えていくべき問題だといえるでしょう。実際、本プロジェクトのリーダーの伊藤正男博士は、「直感」をも視野に入れて研究を考えています。
このプロジェクトで得られた成果はどんな成果でしょう?
これまで研究対象としては、不明であった”熟練者固有”の直観について、脳研究の対象となしえること(脳波やfMRIによる測定が有効)を示しえたことです。局面認知という直観の基礎的な部分で、プロ棋士とアマチュアに脳活動部位の違いという質的な差が認められたことは大きな成果と言えます。
プロ棋士の脳とアマチュアや普通のひとの脳との間にどのような違いがあるのでしょう?
実験を積み重ねてきた結果、プロ棋士においては、大脳基底核の一部である尾状核頭部の内背側部に活動が見られることがわかりました。しかしながら、この活動は、アマチュア棋士には見られないものです。大脳基底核は習慣記憶に重要な働きをすると言われております。つまり、毎日のように集中して将棋の訓練を行ってきた結果、すぐれた直観の能力を身につけることができたわけです。従って、このような自己訓練によって、無意識のうちに無数の選択肢のなかから、候補となる解を選び出してくる能力が習慣として身に付いたと言えるでしょう。また、このような無意識の思考は、小脳も大きく関わっているのではないかと推測されます。このプロジェクトでは、直観における小脳の役割も解明していくことを考えております。
期待している成果とはどういうものなのでしょう?
プロ棋士を含むヒト一般の思考における脳活動のしくみの解明が期待される。さらには熟練技術者一般に共通する直観的な判断能力の脳内機構に対する示唆が得られるかもしれない。
研究対象として将棋を選んだ理由はどんなものでしょう?(チェスや囲碁ではなく)
社団法人日本将棋連盟と協力させていただくご縁がありましたので、将棋が研究の題材となりました。
ひらめきとか直観の脳活動の様子がわかる、囲碁やチェス、その他のゲームに広げていく考え・計画はあるのか。
研究の進展でそういうことへも発展する可能性はあるが、現時点ではそういう予定はありません。とはいえ、チェスについてこれまでに出た論文と比較しながら研究計画は立てているが、脳波について言うと研究はまだ少ないといえるでしょう。特別計画はないけれども、関心は持っています。
 
独立行政法人 理化学研究所 脳科学総合研究センター 将棋思考プロセス研究プロジェクト(将棋プロジェクト)