理研BSIニュース No.24(2004年5月号)

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Brain Network

臼井 支朗

「ニューロインフォマティクスの展開」

ニューロインフォマティクス技術開発チーム
チームリーダー
臼井 支朗


2004年3月をもって、5年間のプロジェクト(文部科学省振興調整費目標達成型脳科学研究「視覚系のニューロインフォマティクスに関する研究」が終了した。「ニューロインフォマティクス」とは、脳神経科学と情報科学を融合し、脳の構造と機能の解明のみならず脳疾患の治療、新しい情報技術の創出など多方面での発展が期待されるIT時代の脳科学研究の一分野である。中でも視覚系は脳科学においても格段に研究が進んでおり、我が国においても、網膜・視覚生理や視覚高次機能、視覚認知機能などに関する多くの優れた研究者が活躍されている。一方、最近の人ロボットの開発においても、視覚機能の高次化やマルチモーダル情報統合機能の実現が期待されており、その開発の基本となる文献情報、実験データなど関連情報のデータベース化、さらには、それらの知見を統合・記述した数理モデルの構築が必須と考えられる。


そんな中、米国NIHのHBP(Human Brain Project: Neuroinformatics Initiative)は、この3月で第1期の10年を終え、4月から第2期の計画:A decade of Neuroscience Informaticsが開始されようとしている。また、昨年10月には、50万$/年以上の研究グラントに対して実験データの公開を義務化する方針が提案され、それを受けてSFNではNeuroscience Database Gatewayの構想を打ち出している(http://big.sfn.org/ndg/site/)。欧州各国も政策的に脳研究を推進しており、国内外で脳研究に係る膨大なデータが蓄積されようとしている。今後の更なる脳研究の進展や効率的な研究推進の観点から、このような膨大なデータを世界中の研究者が共有できる情報基盤を構築することの必要性が各国共通の認識となっている。


図1:Visiome Platformのトップページ
(http://platform.visiome.org/)

このような状況の中、2004年1月に開催されたOECD科学技術政策委員会閣僚級会合の場で脳研究に関するデータの共有化と利用の促進を図るための統合データベースシステムの構築と、その運用を図るための機構(INCF:国際ニューロインフォマティクス統合機構)の設置について合意され、早ければ来年草々にも機構が設置されようとしている。こうしたOECDの動きを受け、国内では2003年6月に文部科学省科学技術・学術審議会ライフサイエンス委員会において、ニューロインフォマティクスに係るOECD国際協力への対応について検討がなされ、我が国も前向きに対応していくことが適当であると結論されている。そのためには、我が国独自の情報を世界に向けて発信していく、組織体制・取り組みが必要不可欠である。これに資するため、ニューロインフォマティクスに係る国際標準となりうる最先端データベース運用基盤の確立を図ることが期待されている。プロジェクトで構築された視覚系のニューロインフォマティクス基盤:Visiome Platform(Visi+ome, 図1)は、今後、他の分野のニューロインフォマティクスデータベースシステム立ち上げの雛形とも成りうるものであると考えられることから、これを核としたデータベースシステムの試行的公開運用と、我が国の戦略的展開を構想すべく、国内の関連する有識者からなる「ニューロインフォマティクス推進委員会(仮称)」の設置が検討されているところである。


今後、BSIとしても Bio/Neuro-Informatics Platformを立ち上げ、日頃の研究成果を電子情報としてインターネット上に広く・迅速に公開していく事がIT時代の社会貢献のあり方の一つとして重要であろう。BSI各位のご理解とご協力をお願いする次第である。最後に、Visiome Platformの公開準備はほぼ完了しており、ご興味をお持ちの方は、http://platform.visiome.org/ をご覧下さい。各位のご意見をお待ちしています。




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