理研BSIニュース No.26(2004年11月号)

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トピックス


BSIサマープログラム2004の開催

今年も7月から2カ月にわたり、BSIサマープログラムが開催されました。サマープログラムはレクチャーコースとインターンシップコースで構成され、毎年、世界各国の多数の大学、研究所から参加があり、今年も世界14カ国から46名が参加しました。


レクチャーコースは、“Learning andMemory: Systems, Theories, andMolecules"というテーマで2週間にわたって開催されました。国内外からお招きした著名な講師によるレクチャーには、多岐にわたる『学習と記憶』領域の基礎から最先端の研究にいたるまでの内容が盛り込まれ、サマープログラム参加者やBSIの研究者と講師との間で活発なディスカッションが行われました。


一方、インターンシップコースの参加者は、約2カ月間BSIのホスト研究室で実際に研究を行い、連日、実験技術や知識の修得などに切磋琢磨していました。またコースの最後には、BSI滞在中に行った研究成果のポスター発表会がありました。


このほか、サマープログラム期間中に行われたポスターセッションや研究室訪問を通して、参加者とBSIのメンバーの研究交流が促進されました。


今後も引き続きサマープログラムを開催し、学生達にBSIの研究者や世界各国の研究者とのインタラクションの機会を提供することによって、将来の世界の脳科学の発展の一翼を担う研究者を育成すると同時にBSIの質的向上を図ることを通して、世界の脳科学に貢献していきたいと思います。


来年度のサマープログラムについては、BSIのホームページ(http://www.brain.riken.jp/summer.html)に掲載されています。ぜひご覧ください。



ワークショップ『The CorticalPyramidal Neuron in 2004』の開催

錐体細胞は大脳皮質において最も豊富に存在する種類の細胞です。この細胞は、大脳皮質からのアウトプット(大脳皮質出力)の主要な源として長年にわたって注目されており、パトリシア・ゴールドマン=ラキーチ氏も指摘したように、ラモニ・カハールによって『サイキック・ニューロン(こころを司る細胞)』と称されています。しかし、錐体細胞の多様性、局所回路、機能的ニューロングループに関する研究は、大脳皮質局所ニューロン研究に比べて大幅に遅れています。


そこで認知脳科学研究グループでは、2004年8月19日、20日に、ワークショップ『The Cortical Pyramidal Neuron(大脳皮質錐体細胞) in 2004』を開催しました。ワークショップの目的は、この分野の1. 進展を再検討し、2. 実りの多い方向に向かう議論を促進し、3. 再び関心を高めさせることにあります。


講演において田中啓治グループディレクターは、認識過程の基盤を理解するにあたって大脳皮質細胞集団およびそれらの局所的長い結合性の重要性を強調しました。続いて、Peter Somogyi博士(オクスフォード大学)が海馬の細胞の種別について、および海馬と新皮質の回路設計について講演しました。脳皮質機能構造研究チームの Kathleen S. Rocklandチームリーダーは、大脳皮質1・2層にある蜂の巣型モジュール構造と、それに関連した亜鉛を含む興奮性神経終末に関する新発見を発表し、池谷裕二博士(コロンビア大学)は新皮質における神経自発活動アンサンブルのダイナミックス(Synfire Chains and Cortical Songs:共発火チェーンと大脳皮質の歌)について語りました。窪田芳之博士(自然科学研究機構生理学研究所)は、異なったタイプのダブルブーケ細胞は、錐体と非錐体細胞両方に多数の特異的シナプスターゲットを持っていることの証拠を電子顕微鏡的再構築によって示しました。金子武嗣博士(京都大学) は、例えば第5層の大脳皮質脊髄投射ニューロンが2・3層からの情報を、第6層の大脳皮質視床投射ニューロンに比べて4倍の効率で受容していることなど、ネズミの運動野における細胞特異的結合性のさまざまな側面を立証しました。


参加者が活発に参加した議論は、2つのポスターセッションまで続き、これらのポスターセッションではBSIの研究者と研究協力者が、11枚のポスターを展示しました。



第2回国際ワークショップ『Frontier in Molecular Neuropathology』の開催

2004年9月30日~10月1日、タワーホール船堀 (江戸川区総合区民ホール)にて、脳科学総合研究センター病因遺伝子研究グループ第2回国際ワークショップ『Frontier in Molecular Neuropathology』が日本痴呆学会と共催で開催されました。第1回国際ワークショップは2002年に開催し、神経変性・神経疾患の研究に関連する先端的研究を行っている研究者が集まり、情報交換・意見交換を行いましたが、今回は貫名信行グループディレクターが第23回痴呆学会の会長を務めたこともあり、アルツハイマー病の関連のセッションも大きめにしました。


アルツハイマー病研究ではB.DeStrooper博士(VIB abd K.U Leeven,Belgium)、MC.Irizarry博士(Harvard)、T.Seabrook博士(Harvard)、T.Iwatsubo博士(東京大学)を招き、BSIからは西道隆臣チームリーダー(神経蛋白制御研究チーム)、高島明彦チームリーダー(アルツハイマー病研究チーム)が出席しました。最新の研究成果がγセクレターゼ、免疫療法、β蛋白分解、タウタンパクに関連して発表されました。


神経変性疾患の領域ではパーキンソン病に関してB.Liu博士(Stanford)、高橋良輔チームリーダー(運動系神経変性研究チーム)、ALSに関してD.Cleveland博士(UCSD)、ポリグルタミン病に関連してはDC.Rubinsztein博士(Cambridge)、 IB.Bezprozvanny博士(UT)、A.La Spada博士(U.Washington)、貫名グループディレクターが発表を行いました。


病態研究の最前線が主でしたが、多くのトッピクスが報告されました。活発な討論が行われ、多くの参加者から非常におもしろかったという感想がありました。今回は痴呆学会との共催だったため、初日が250人程度、二日目が150人程度の参加者がありましたが、痴呆学会の参加者にとってはアルツハイマー病以外の神経変性疾患のトッピクスにふれられたのがよかったという感想もありました。さらに懇親会、コーヒーブレークなどの時間を通じて活発に交流が行われました。神経疾患は最近急速にその病態研究が進んでおり、今後もできれば頻回にこのようなワークショップを行いたいと考えています。なお、この場を借りてワークショップの運営を支えてくれたスタッフに感謝します。



神戸研究所-和光・中央研究所-脳科学総合研究センタージョイントフォーラムの開催

2004年9月13日、14日の両日、大河内記念ホールにて神戸・発生再生科学総合研究センター(CDB)-和光・中央研究所(DRI)-脳科学総合研究センター(BSI)ジョイントフォーラムを開催しました。昨年以来、CDBとBSIは3回ジョイントフォーラムを神戸と和光とで交互に開催してきましたが、今回から初めてDRIが加わり、神戸研究所と和光研究所としても初めての三者合同の開催ということになりました。これまではそれぞれのセンターが独自に研究を展開してきましたが、理研内における連携強化、研究協力が叫ばれる中、各センターからホットな話題の紹介があり、発表者にはたくさんの質疑応答がありました。


今回のメインとなったCDBの竹市雅俊センター長による「αN-catenin is requiredfor synapse stability」、そしてBSIの御子柴克彦グループディレクター(発生発達研究グループ)による「Ca2+ signalingin development and cell function」というそれぞれのテーマの講演には、分野を越えて多数の聴衆がありました。今後は来年5月頃に横浜研究所も加えたリトリートなども計画されており、今後ますます理研内の協力関係が深まっていくものと思われます。



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