Do you“脳”? 脳に関する基礎知識
脳科学とは
重さ1400グラム足らずの脳が、ヒトの生命活動を支える循環、呼吸、消化といった機能をつかさどる。脳の働きは生命維持の基本的な機能だけではない。日々の出来事をいくつか思い出してみよう。昼ごはんは美味しかったか、最近見たドラマで一番感動したのは、学校や職場から家へ帰るとき、寄り道をした?
感動する自分、判断する自分、行動する自分は全て脳の機能のなせる業なのだ。また、経験から学び、言葉を話し、友人とコミュニケーションを取り、抽象的なことを考えるのも、脳あってのことなのだ。つまり、進化してきた脳があるから人間であるのだ。
BSIの脳科学者たちは、脳の仕組みを解明するために、次のような基本的な課題への答えを見つけようとしている。
- 脳の中にある遺伝子およびタンパク質はどのような機能を演じているのか
- 脳細胞は、どのようにしてお互いに対話しているのか
- 脳はどのようにして成長し、また私たちが学ぶ時には脳のなかで何が起きているか
- 老化を回復し、脳の損傷を修復することは可能か
- 私たちの持つ脳の機能の知識を適用し、人工知能をもつ機械を作り出せるか
これらを解明するために、様々な実験的な方法を用いて研究をしている。次に紹介するのが、理研BSIの脳科学者が用いている研究方法の数例だ。
●分子生物学
脳細胞のなかに見られる様々な分子の構造、機能およびそれらの相互作用を分析することにより、脳細胞の成長、機能および老化のもとになる分子機構とその機能を研究している。
●遺伝学
脳の発達は遺伝子により決定されている。脳科学者たちは、脳の発達期間中にどの遺伝子が発現し活性化されるか、遺伝子の変化がどのように発達に影響し、時には疾病に導くのかを研究している。最近の技術革新は、強力な研究の方法を与えてくれた。今では、選択的に特定の遺伝子をネズミから取り除いたり、反対に特定の遺伝子をネズミに挿入したりすることが可能になった。そして、それらの遺伝子によって産生されたタンパク質の機能を調べることを可能にした。
●神経生理学
脳細胞が活動する時は、電気信号が発生する。この電気信号や、脳の活動によって生じる脳の代謝活性を計測すると、脳細胞がどのように情報を処理しているか、あるいはどのように相互に対話しているかを知ることができる。
●神経解剖学
脳全体には、千数百億個の、様々な形・サイズの脳細胞が生きている。一つの脳細胞の形態を分析することで、その機能や、ほかのどの脳細胞と対話しているか、あるいはこれらの対話がどんな役割を果たすのかについて、多くの情報を得ることができるのだ。
●コンピュータ模擬実験
脳科学者たちは、脳の機能を模倣するコンピュータのプログラムや機械を作成し、理論的な脳科学の研究をしている。脳がどのように働くかのモデルを構築することは、脳の機能と特性を理解する手助けとなるのだ。