理化学研究所 脳科学総合研究センター(理研BSI)
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脳科学の人 研究者インタビュー

合原 一究

Name 合原 一究(あいはら いっきゅう)
Position 基礎科学特別研究員
Education 京都大学理学部
BSI Lab 脳数理研究チーム

代表的研究ニホンアマガエル、合唱の法則の発見

カエルの鳴き声、特に集団での合唱について、ニホンアマガエルという種類を対象に研究しています。ニホンアマガエルは、南は鹿児島県から北は北海道までの広い範囲に生息しています。春になり田んぼに水が入ると、集団で鳴き始めるのが主にこのカエルです。近所に田んぼのある人には、馴染みがあるかもしれません。このように身近な現象である「カエルの合唱」ですが、カエル達が何らかの法則に従って合唱しているのか、それともてんでバラバラに鳴いているだけなのか、といった詳しいことはわかっていませんでした。というのは、野外でたくさんのカエルが同時に鳴いているときに、1匹1匹の鳴き声を聞き分けることは難しいからです。ちなみに、鳴くのは基本的にオスだけで、メスは鳴きません。

ニホンアマガエル
ニホンアマガエル

僕は京都大学・東京大学と協力して、そのような複雑な状況でカエル同士を識別するために、音声をマイクで検出してLEDを光らせる「カエルホタル」という手のひらほどの大きさの装置を開発しました。カエルホタルは近くで音が鳴ったときにだけ光ります。このカエルホタルを田んぼの周りにたくさん並べ、その中でどれがいつ光っているかを調べれば、カエル1匹1匹がどこでいつ鳴いているかを知ることができると考えました。僕たちは実際にカエルホタル40台を田んぼに並べて実験を行い、近くにいるカエル同士は交互に鳴くという法則を発見しました。

そうすると次に気になったのは、カエル同士はどのようにして鳴くタイミングを調整しているのかということです。ニホンアマガエルは1匹だけのときは、一定のリズムで1秒間に3〜4回鳴きます。また、カエルは鼓膜を持っているので、他のカエルの鳴き声を聞くことができます。そこで、「それぞれのカエルは一定のリズムで鳴き、同時に他のカエルの鳴き声を聞くことで、自分の鳴くタイミングを調整している」という仮説を立てました。この仮説を、まず結合振動子系の理論を応用することで数式として記述しました。結合振動子系とは一定のリズムを持つものが互いに影響を及ぼし合う状況を表す用語で、それらの集団でのリズムの変化を記述する理論がこれまで活発に研究されてきました。僕たちは、この結合振動子系の理論を応用した数式を使って数値シミュレーションを行い、近くのニホンアマガエルが交互に鳴くという現象の再現に成功しました。

このように、カエルの合唱の法則を、自分たちで考えた装置や数式を使って明らかにしていくのが僕たちの研究です。

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