脳科学の人 研究者インタビュー
20年前の私カラダもアタマも良く使う
小学生の頃、僕はマレーシアのクアラルンプールに住んでいました。自然豊かな都市で、現地の人の他に日本人、欧米人も多く住んでおり、日本ではできないいろいろな体験をしました。普段は真っ黒に日焼けしながらサッカーや水泳などで友達と元気に遊んでいました。マンションではあらゆる場所を駆け回り、長くまっすぐな枝を見つけたならチャンバラを始め、ノラ猫の仔や怪我をしたカラスを見つけたなら家に連れ帰りと、縦横無尽な行動ばかり記憶に残っています。授業中は内職をしたり友達とゲームを始めたり、とにかく落ち着きのない子でした。一方で、問題を与えられたなら『解いてやろう!』と躍起になり、自然や物理法則で何か面白いことを見つけたら『何故だろう?』と興味を湧かせました。おまけに、宇宙の始まりや、自分が生きる意味など、考えても答えが出ないことを、一度頭に浮かぶと数分間は妄想にふけるような変な癖がありました。
憧れの人上原ひろみ!
比較的最近ですが、ジャズピアニストの上原ひろみさんが大好きです!自分の好きなことにまっすぐで、常に新しいものを生み出し続ける。世界中を飛び回り、多くの人に感動を、興奮を分け与える。そのことをひろみさん自身が大好き。彼女の生き方には本当に憧れます。
好きだった教科理科、数学、体育、家庭科
<理科> 身近な科学として、生物と化学が好きでした。動物の体にかかわる勉強が特に好きでした。
<体育と家庭科> 体を動かすこと、ものを作ることも好きでした。これは今も同じです。運動神経と手先の器用さは現在の実験に役立っていると思います。
<数学> 小学校の頃、学年が上がって新しい算数の教科書をもらったとき、教科書に書いてある全ての問題を2週間で解いて先生に呆れられたことがありました。そこに問題があると解きたくなっちゃうんですね。しかしその1年間、算数の授業中は何をしていたんでしょう、覚えていません^^
脳科学に進んだきっかけ自分にしかできないことを探して
もともと、自分にしかできないことをやりたい!という考えが強くありました。しかし研究者を目指そうと思ったこと自体はとても遅く、脳科学に進もうと決心したのは大学4年のことでした。大学の卒業研究で、脊髄でしたが、神経系の活動を記録する実験を行っており、まさに今神経細胞が起こしたその電気的活動を見られる手法をとても面白く思いました。神経細胞一つひとつの間で行われる情報伝達を計測する実験で、脳全体の理解を進める研究ができたら嬉しいだろうと思い、脳科学の道へと進みました。
脳科学の面白さ
脳内の神経細胞のコミュニケーションを想像しながら
神経細胞の形は少しずつ異なり、電気活動にも個性があります。実験をしていると、神経細胞一つひとつが別個の生き物で、神経回路というコミュニティーを形成している、そんな気がしてきます。脳の中でこそこそ話しているのを聞かせてもらうような、今行っている実験がとても楽しいです。さて、私たちは日々、脳を常に活用しています。この文章を読んでくださっている皆さんも、存分に脳を使っていただけていることでしょう。この文章の内容は、少なくとも明日は覚えていますよね。ということは脳内に何かしらの変化が生じた訳です。不思議な心地がしませんか?脳を科学することは、何かを感じて、覚えて、考える、私たちが人間たる根本を考察することだと言えるかもしれません。学んだことや調べたことによって自分自身のことを考えさせてくれる、脳科学とは面白い関係にあると思っています。