脳科学の人 研究者インタビュー
研究者の生活常に何かを考える
スポーツ選手や音楽家と同じかもしれません。日々練習し、鍛えるのと同じで、常に何かを考え、ヒントを探しています。
研究者の休日やっぱり色々考える
考えないように、運動したり、映画をみたりします。しかし、結局、研究のことなど様々なことを考えてしまいます。
アイディアが浮かぶ瞬間仕事以外の時間
仕事の時間よりも、移動中や休憩時間、休日にアイディアを思いつくことがあります。ショッピングをしていて、休憩のため喫茶店に入り、議論していたりすると、ふと良いアイディアが浮かんだりします。
BSIの良いところ議論できる研究者たち
環境の良さです。BSIは議論をしていただける素晴らしい知識をお持ちの科学者が多いため、議論を通して自分の考えが良いのか悪いのかがわかり、様々な角度から物事を考える助けになります。
20年後の私わからないです
それが面白いと思っています。疑問を持ち、自分の力で真実を追い求めていればいいなと思っています。
今一番知りたいのは「記憶」と「考える」仕組み
ここ数年、認知症が身近な病気になりはじめてきました。認知症を含む高次脳機能障害は記憶とともに考える力も低下してしまう病気です。高次脳機能障害の患者様の脳の中で、一体何が起きているのかについて真実を知り、その治療の可能性を探す必要があります。どのように脳を使い、人間は「記憶」し、その記憶を使って「考える」ことができるのかについて知り、高次脳機能障害が起きるメカニズムを突き止めたいと考えています。
高校生へのメッセージ
どんなことでも当たり前だと思い込まないでください。本当は分からないことの方が多いはずです。たくさん疑問をもち、納得できるまで自分で調べ、考えることを忘れないでください。科学者に限らず、スポーツ選手も、自分のプレーに疑問を感じ、調べ、考え、より良いプレーを目指すはずです。誰だって科学者であり、探偵になれるわけで、そのことが、スポーツや音楽、技術開発、法律・政治、診察し治療法を考える医療現場など、どんな分野においても重要なことだと思います。
自分の進路の流し方 ― 本多研究員の場合
大学~大学院
私が大学へ入学した頃から、ICT(情報通信技術)分野のめまぐるしい発展が期待され始め、ICTをどのような分野で応用させるのかが在籍していた工学分野の大学の課題でした。私自身も無から何かを作り出せるICTに対し、無限の可能性を感じ、情報科学分野に進みました。
そこでは、人間の機能を調べ、模倣し、応用することを学びました。例えば、3D画像の技術開発は、人間の目のメカニズムを応用しています。人間の機能から学び、ICTによって応用され、実現されていくところが面白いと感じました。そこで、私は情報科学の技術をもって、脳科学の発展を目指すことを考え、大学4年生の卒業研究で、ICTによる小脳のシミュレーションに挑戦しました。私自身、この研究にとても興味を持ち、その後、単位互換制度を利用して他大学で神経生理学の基礎を学び、脳科学の魅力を知ることとなりました。
研修生として理研にやってくる
大学院2年生のときに、指導教員である教授から、より一層研究を進めるために理化学研究所 脳科学総合研究センター(BSI)に研修生として行ってみないか、とアドバイスされました。理研といえば、プロフェッショナルな研究者の集まるところですから、ちゃんとやっていけるのか不安にはなりましたが、脳科学における最先端の場で、どのような研究が行われているのかを知りたい、という思いが勝りました。
BSIにやって来て、有名な教科書や本の執筆、編集をされていた伊藤正男先生や甘利俊一先生をお見かけしたときの感動は今でも忘れません。BSIでは多くの先生方に手取り足取り丁寧に、そして、親切に教えていただき、そのおかげで今まで研究を続けられているのだと感じています。
その後、自分の研究を論文として発表したい、という思いから博士課程に進みました。このとき、理研の制度であるJRA(ジュニア・リサーチ・アソシエイト)という奨学金に応募し、幸運にも採択され、滞りなく研究が進み、学位も短期取得できました。その後もJSPS(日本学術振興会)の特別研究員に選んでいただき、これらの制度を利用したおかげで、与えられた研究課題ではなく自分で挑戦したい研究課題に取り組むことができました。
ICT応用の未来
ICTを用いた理論研究が動物実験の研究での新発見に貢献することを目指し、現在も挑戦しています。さらに、東京医科歯科大学医学部の神経内科の医師たちと力を合わせ、小脳のメカニズムに基づいた検査システムの研究開発を目指す機会も得ることができました。患者様にご協力いただいて、ICTを用いた理論研究が臨床の現場で応用されることも重要であると日々感じています。